マウスヒゲシステムを用いた小脳への感覚信号経路の解析

2021 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19K16278
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 久保 怜香 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (20835962)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 体性感覚 / 小脳

研究実績の概要

本研究は、2018年に我々が見出した口辺ヒゲ領域から視床―中脳領域area parafascicularis prerubralis（PfPr）を介して小脳プルキンエ細胞に伝達される体性感覚信号経路の同定を目的としていた。最近の研究で口辺から小脳プルキンエ細胞への体性感覚経路に大脳皮質一次体性感覚野上唇領域が関与することが明らかになったため（Shimuta, 2020）、2021年度には、まず、一次体性感覚野からPfPrへの直接投射が信号経路に含まれるかどうかを検討した。PfPrに逆行性にArchTを発現させるアデノ随伴ウイルスを注入し、PfPrに直接投射する大脳皮質の神経細胞にArchTを発現させ、大脳皮質に対して黄色光を照射しArchTが発現した細胞の神経活動を抑制すると、一次体性感覚野上唇領域周辺に光照射をした場合に、口辺刺激によりプルキンエ細胞で誘発されるsimple spike応答の２相性の成分のうち遅い潜時の成分が阻害された。この結果は、一次体性感覚野上唇領域からPfPrへの直接投射がsimple spike応答の遅い潜時の成分に関与することを示唆している。現在は、これまでの本研究にて新たに発見した中継神経核である尾側橋網様核と橋灰白質が、口辺からPfPrを介する小脳への体性感覚信号経路のどの位置にあるのかをアデノ随伴ウイルス注入とオプトジェネティクスの手法により解析している。本研究により、これまで不明な点が多かった中脳領域の体性感覚信号処理への関与の解明に繋がることが期待される。

研究成果

• [雑誌論文] Spike firing attenuation of serotonin neurons in learned helplessness rats is reversed by ketamine (2021)
  • 著者名/発表者名: Kouichi Hashimoto, Yosuke Yamawaki, Kenji Yamaoka, Takayuki Yoshida, Kana Okada, Wanqin Tan, Miwako Yamasaki, Yoshiko Matsumoto-Makidono, Reika Kubo, Hisako Nakayama, Tsutomu Kataoka, Takashi Kanematsu, Masahiko Watanabe, Yasumasa Okamoto, Shigeru Morinobu, Hidenori Aizawa, Shigeto Yamawaki
  • 雑誌名: Brain Communications 巻: fcab285 ページ: 1, 15
  • DOI: 10.1093/braincomms/fcab285
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] 小脳プルキンエ細胞への口辺体性感覚信号経路の解析 (2022)
  • 著者名/発表者名: 久保怜香、橋本浩一
  • 学会等名: 第99回日本生理学会大会
  • 招待講演
• [学会発表] 小脳への平行線維を介する口辺体性感覚信号経路の解析 (2021)
  • 著者名/発表者名: 久保怜香、橋本浩一
  • 学会等名: 第73回日本生理学会中国四国地方会
• [学会発表] 口辺ヒゲ領域から小脳への橋核と視床―中脳領域を介する体性感覚信号経路の解析 (2021)
  • 著者名/発表者名: 久保怜香、橋本浩一
  • 学会等名: 第44回日本神経科学大会