研究課題/領域番号 |
19K16285
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
干場 義生 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (40780200)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 精神疾患 / うつ病 / 糖尿病 / 多臓器円環 / シナプス / マウス |
研究実績の概要 |
うつ病などの精神疾患と糖尿病はいずれも重点対策が必要な5大疾病と位置づけられている。これら2疾病は独立した事象ではなく、双方向性の増悪作用が示唆されており、併存症が大きな問題になっている。しかしながら、この問題に取り組む基礎研究者は少なく、糖尿病がうつ病を増悪させる分子・細胞メカニズムは未解明である。そこで本研究では多臓器円環の観点から、末梢組織がいかにして中枢神経系に影響し、うつ病を増悪させるかを検討する。
そのために、本年度は新規の"糖尿病-うつ病併存症モデルマウス"を確立した。従来確立されている糖尿病モデルマウス(ストレプトゾトシンモデル)に、内因性うつ病様症状を再現良く誘発することが確立している慢性拘束ストレスモデルを組み合わせることで新規に"糖尿病-うつ病併存症マウス"を作製した。本年度は4コホートに渡り、モデルマウスの作製、行動解析を含む一連の実験を行い、累計で対照群21個体、うつ病単独群21個体、糖尿病単独群18個体、糖尿病-うつ病併存症群15個体を得た。行動解析の結果、活動量の低下等、抑うつ状態を示す指標に各群で統計的有意差があることを見出した。これによりモデル動物の確立、およびその個体数確保は完了したと考えている。今後はモデルマウスに対しin vivoスパインイメージングを行い、シナプスレベルの病態解析を行う。また、RNA-Seq、縦断的サイトカイン測定による分子メカニズムの探索、および、その因果関係の解明に挑戦する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来確立されている糖尿病モデルマウス(ストレプトゾトシンモデル)に、内因性うつ病様症状を再現良く誘発することが確立している慢性拘束ストレスモデル(1日6時間、3週間連続の慢性拘束ストレス負荷)を組み合わせることで糖尿病-うつ病併存症マウスを作製した。これまでの準備実験に加え、本年度に4コホートの実験を行い、対照群21個体、うつ病単独群21個体、糖尿病単独群18個体、糖尿病-うつ病併存症群15個体を得た。これによりモデル動物の個体数としては十分な数を確保できたと考えている。その結果、活動量の低下等、抑うつ状態を示す指標に各群で統計的有意差があることを見出した。このように、本年度の目標のひとつであった"糖尿病-うつ病併存症モデルマウスの確立"については予定通り、順調に進行している。
しかしながら、本年度に研究代表者が所属している研究室の主宰者が異動したことに伴い、機器の移転作業等があったため、シナプスイメージングについて、本年度に実施することはできなかった。本研究で計画しているイメージングに必要な機器も研究代表者の所属機関から移転されたが、本研究自体は移転先と共同研究で遂行可能である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は糖尿病によるうつ病様症状増悪の分子・細胞メカニズムを解明するため、下記実験を計画している。 (1)すでに取得済みの縦断的サイトカイン測定、および、RNA-Seqの結果から候補因子を抽出し、各候補因子についてqPCR、Western blot、免疫組織染色により生体レベルで実際に変動しているかを検証する。 (2)糖尿病および慢性ストレス負荷が脳に与える影響をシナプスレベルで観察するため、樹状突起スパインのin vivo 2光子イメージングを行う。 (3)上記で得られた候補因子について、阻害薬の脳内投与等の実験により、因果関係の解明に挑戦する。その上でスパインイメージングおよび行動解析を行い、糖尿病-うつ病併存症に伴うスパイン障害やうつ様症状等の表現型がレスキューされるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属研究室の研究主宰者が異動したことに伴い、当初計画していたスパインイメージングを次年度に延期した。次年度使用額は延期した実験のための動物飼育、手術用消耗品等に充てる。
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