研究課題
若手研究
脳内でいったん萎縮した軸索(神経突起の一つ)を再伸長させることによって、アルツハイマー病に対する新規治療法を開発することを目指した。その結果、アルツハイマー病モデル(5XFAD)マウス脳内では記憶形成に関わる海馬―前頭前野間の軸索が萎縮しているが、薬物ジオスゲニンを投与すると本回路の軸索がつながるべき脳部位に再伸長することを初めて明らかにした。また、脳での軸索再伸長に重要な責任タンパク質として、SPARC及びGalectin-1を見出した。さらに、脳での軸索再伸長が確かに記憶回復に直接関わることを機能学的に証明した。
神経薬理学、神経科学
これまでの脳科学上の常識では、成体脳の軸索は再伸長することが難しいと考えられてきたが、本研究ではアルツハイマー病脳内の軸索が再伸長できる根拠と、本現象を担う責任タンパク質(SPARC, Galectin-1)を明らかにし、さらにこれを誘発できる薬物ジオスゲニンを初めて見出した。また、脳内での軸索再伸長が確かに記憶回復をもたらすことも明らかにした。これらは、脳内の軸索再伸長がアルツハイマー病をはじめとした神経変性疾患に対する新規治療戦略になりうることを示唆する知見である。