研究課題/領域番号 |
19K16290
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
望月 孝規 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (30790430)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 前帯状皮質 / 光遺伝学 / 排尿生理 / 過活動膀胱 |
研究実績の概要 |
・興奮性ニューロンに特異的に分布しているCaMKⅡ依存性に興奮性オプシンであるChR2を発現するアデノ随伴ウイルスを野生型マウスの前帯状皮質に投与し、前帯状皮質だけにChR2を発現させたマウスに対し光刺激を行ったところ排尿を誘発させた。 ・排尿に関与していると明らかである中脳水道周囲灰白質に逆行性トレーサーを注入し、前帯状皮質にも続く複雑な経路を確認した。恐怖をつかさどる側坐核や下垂体後葉から発生する抗利尿ホルモンであるバソプレッシンを制御している可能性がある室傍核にも蛍光トレーサーが確認でき、これらが排尿とも関与している可能性が示唆された。 ・前帯状皮質から中脳水道周囲灰白質への経路を限定的に刺激するため逆行性にCreを発現するウイルスを中脳水道周囲灰白質に注入し、その一方Cre依存的にChR2を発現するウイルスを前帯状皮質に注入し、中脳水道周囲灰白質への投射が存在する経路限定的に光刺激を行ったところ排尿を誘発させた。 ・酢酸投与およびシクロフォスファミド投与により頻尿になるマウスの作成を行った。 ・ウレタン麻酔下に大脳皮質5層興奮性ニューロンにChR2を発現しているマウスを用いて膀胱内圧を測定中に大脳皮質のいろいろな箇所へ光プローブを刺入して排尿圧の変化を測定した。Bregmaより前方向では前帯状皮質への刺入時に排尿圧上昇効果が最も高く、外側へ移動するにつれて排尿圧上昇効果が低下した。以上より正常のマウス排尿生理に関して実績を積んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来は1年間で排尿に関する基礎生理を解明し、2年目に病的状態のマウスに対する新規治療を模索する予定であったが、神経トレーサーの確認により排尿と関連がありそうな恐怖をつかさどる領野や抗利尿ホルモンであるバソプレッシンの調整に携わる領野にも関連がありそうであり、前帯状皮質と中脳水道周囲灰白質および橋排尿中枢との3点での連携という簡単な経路ではないと判断している。神経トレーサーで判明した領域のと連携関連に関して確認する必要があるので病的状態については病的モデルマウスの作成は確立したものの、十分に取り組めていない。また脳神経活動においては2光子顕微鏡での観察が手法として確立できていないため。
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今後の研究の推進方策 |
まずは十分に解明されていない標準の排尿生理についての解明の行っていく予定である。逆行性にCreを発現するウイルスおよびCre依存的にChR2を発現するウイルスの両者を用いて投射経路限定的な刺激を継続し、排尿圧にどのような影響をもたらすのか解明を継続する。正常な生理が十分に解明できた、あるいは排尿との関連がありそうな経路に関しては病的状態のマウスの利用を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
前帯状皮質に限定した刺激実験が失敗例がほとんどなく良好に実験ができたためである。次年度は病的マウスなどの作成および使用もあり、より多くの試薬を使用する予定である。
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