研究課題/領域番号 |
19K16291
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
高橋 光規 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (30788922)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ケージド化合物 / 線虫 / カルシウムイメージング / マイクロ流路 / 神経活動観察 |
研究実績の概要 |
本研究では、長波長光で駆動するケージド化合物を用い、線虫の神経活動を光制御するとともにカルシウムセンサーGCaMPで神経活動を同時に観察する手法の開発を目指している。初年度は、PDMS樹脂製の極小流路チップに線虫を収め、感覚神経ASHの活動をケージド化合物で制御しながら、GCaMPによる神経活動の観察を試みた。具体的には、幅70μm、長さ1200μm、高さ28μmの直線上流路にケージド化合物を取り込ませた線虫を挿入し、波長580 nmの黄色光を照射することで神経活動の制御を行った。同時に、470 nmの青色光でGCaMPの活動を観察した。黄色光の照射により感覚神経ASHに発現したGCaMPの蛍光が上昇したことから、神経活動を光制御できることを確認した。同時に、線虫の体を伝搬するサイン波の進行方向が逆転することが観察された。したがって、神経活動の光制御および神経活動と行動の同時観察に成功したといえる。しかしながら、さらなる実験系の安定化のためにいくつかの課題が明らかとなった。まず、線虫の行動とGCaMPの蛍光を同時に視野内に収めるため、低倍レンズで強い青色光を照射する必要がある。これにより、GCaMPの蛍光退色が進むことと、線虫への光毒性が懸念された。また、線虫が素早く動くために、これまでに利用していたImageJによるGCaMP発現細胞のトラッキングスクリプトが上手く機能せず、GCaMPの蛍光変化を定量することが困難なことがしばしばあった。これらの課題を解決するため、GCaMPの蛍光退色と光毒性を防ぐ目的で、カメラの撮影時のみに同期して点灯するLED光源を導入すること、またMATLABを利用した新規のGCaMPトラッキングプログラムの製作に着手している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標は、神経活動を光制御し、同時に神経活動と行動のイメージングを行うことである。実験系安定化のためにいくつかの課題が見いだされたものの、感覚神経ASHの神経活動と線虫行動の変化を対応づけるデータを取得できたことから、おおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の検討で、GCaMPの励起に必要な青色光により蛍光退色が進み、光毒性による線虫へのダメージが懸念されることが明らかになった。また、線虫が素早く動くため、GCaMP蛍光のトラッキングが上手くできない場合があることも明らかとなった。そこで、蛍光退色と光毒性への対応として、カメラの撮影時のみに同期して点灯する青色LED光源を導入する予定である。これにより、1回の実験で照射される光の総量を最大10分の1に抑え、蛍光退色と光毒性を防ぐことができると考えられる。また、GCaMP蛍光のトラッキングのため、MATLABの画像解析機能を活用した新たな蛍光トラッキングプログラムの開発にも着手しており、すでにGCaMP発現細胞のトラッキングに成功している。今後、さらなる改良を加え、素早く動くGCaMP発現細胞でもトラッキングが可能か検討を試みる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度には、神経科学大会および解剖学会に参加予定であったが、神経科学大会は日程の都合で参加しなかった。また、解剖学会は3月に山口県にて開催予定であったが、コロナウイルスの影響により誌上開催となった。したがって、学会参加費の支出がなかったため、次年度使用額が生じた。次年度においては、翌年度分として請求した金額と合わせて、GCaMP例起用の青色LED光源の購入費用として使用する。
|