研究課題/領域番号 |
19K16294
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
治田 彩香 宮崎大学, 医学部, 助教 (80773316)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 痒み / AMPA受容体 / ペランパネル / 引っ掻き行動 |
研究実績の概要 |
本研究では、AMPA受容体に対して高選択非競合的に結合し、受容体の活性を減弱することによってその効果を誘発する抗てんかん薬であるペランパネルの抗掻痒効果に関する基礎的データを得ることにより、ペランパネルが抗掻痒薬として利用できるか否かについて検討することを目的とした。 本研究ではマウスを用いた行動実験を実施した。AMPA/kainate(AMPA/KA)受容体拮抗薬であるNBQXの抗掻痒効果を評価したところ、他のAMPA/KA受容体拮抗薬であるCNQXがヒスタミン及びクロロキン(CQ)による引っ掻き行動を抑制したという過去の報告と一致した。一方、ペランパネルの髄腔内投与では、CQにより誘発される引っ掻き行動は有意に抑制されたが、ヒスタミンにより誘発される引っ掻き行動に有意な変化はみられなかった。AMPA受容体がCQによる急性の痒みの情報伝達に寄与する一方で、KA受容体は急性の痒みに対してAMPA受容体とは異なる役割を果たしている可能性を示唆するものと考えられた。 接触皮膚炎モデルマウス及びアトピー性皮膚炎モデルマウスを用いた実験においては、ペランパネルが慢性的な痒みに対しても抑制効果を発揮する可能性が示唆された。特にアトピー性皮膚炎モデルマウスを用いた実験において、ペランパネルの髄腔内投与後比較的長い抗掻痒効果の持続を認め、ペランパネルのヒトでの体内消失半減期が約105時間という薬理学的特徴を反映していると考えられた。 本研究の結果から、AMPA受容体がマウスの急性および慢性の痒みの情報伝達において重要な役割を果たしており、抗てんかん薬であるペランパネルがヒトの痒みを軽減する候補薬となる可能性が示唆された。いわゆるドラッグ・リポジショニング(既存薬再開発)の可能性を強く示唆する結果であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、慢性の痒みについては接触皮膚炎モデルマウスでの検討のみ予定していたが、その結果を解析したところ、より長期に引っ掻き行動が持続する対照群の設定の必要性があると考えられた。そのため、アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いた検討を研究計画に追加することとした。そのため、当初の予定より成果発表までに時間を費やすことになった。 また、新型コロナウイルスの流行に伴い、国際学会が開催中止となる事態に見舞われたが、国内学会でのリモート発表や論文などで研究成果を公表してきた。
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今後の研究の推進方策 |
イオンチャンネル共役型グルタミン酸受容体は、AMPA受容体、NMDA受容体およびKA受容体の3つのサブタイプに分類される。掻痒に関しては、AMPA/ KA受容体がクロロキン及びヒスタミンで誘発される急性の痒みへ関与することが示唆されている(Kogaら、2011; Akiyamaら、2014)。本研究では、クロロキンにより誘発された急性の痒みに対し、AMPA受容体拮抗薬であるぺランパネルが抗掻痒効果を示すことを明らかにしてきた。しかし、ぺランパネルはヒスタミンで誘発される急性の痒みに対しては有意な抗掻痒効果を示さなかった。そこで今後は、KA受容体が難治性掻痒の治療法開発のターゲットとなるか、その抗掻痒効果に関する基礎的データを得ることで薬理学的性質を検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行に伴う研究代表者のその他の業務の多忙及び、参加を予定していた学会が中止となり、次年度使用額が生じるに至った。2021年度の学会参加や論文投稿等に助成金を使用する計画である。
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