研究課題/領域番号 |
19K16299
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉澤 知彦 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (70825744)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マルチユニット記録 / 機械学習 / 線条体 / 前頭前野 / 一次運動野 |
研究実績の概要 |
1) 2021年度は、行動課題遂行中のラットから集団神経活動を多チャンネルマルチユニット記録し、 行動課題の各時刻において集団神経活動が生成された時のマクロな脳状態 (Macro Brain State: MBS) を機械学習の技術を用いて抽出することを目指した。 行動課題には左右二択課題を採用し、ラットが行う運動を一定にした上でワーキングメモリーへの負荷を変化させた。その結果、負荷がない時のラットの行動戦略はwin-stay, lose-switch(WSLS)型であったのに対して、負荷があるときの行動戦略は強化学習型に変化した。大脳皮質-基底核ループの内、前頭系ループを構成する前頭前皮質と背内側線条体、および運動系ループを構成する一次運動野と背外側線条体から同時にマルチユニット記録を行い、各脳部位から数百個の神経活動を行動課題遂行中に記録した。MBSを抽出するため、記録した神経活動データに対して機械学習の手法を適応したところ、WSLS型の行動戦略を反映したシグナルを検出することができた。また、背内側線条体と背外側線条体ではワーキングメモリーに保持される情報に違いがあることもわかった。これらの成果をまとめ論文投稿準備を進めた。 2) 上記の実験では微小電極をラットの頭蓋骨に歯科用レジンを用いて固定した。歯科用レジンのモノマーは易揮発性の液体であり、ラットはその蒸気を吸入する可能性があったため、脳への影響を評価してJournal of Oral Biosciencesに発表した。 Yoshizawa T, Funahashi M, (2020) Effects of methyl methacrylate on the excitability of the area postrema neurons in rats. J Oral Biosci., 62(4):306-309.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は研究代表者の所属機関変更やCOVID-19の影響による実験中断が予想外に生じたものの、年度中盤までに行動課題遂行中のラットの4つの脳領域から数百個の神経活動を記録することができ、さらにそのデータに機械学習の手法を適用することでラットの行動戦略に一致したシグナルを検出することに成功した。年度終盤には研究成果の論文化に向けた作業を開始した。また、本研究課題を実施するにあたりラットのマルチユニット記録実験で汎用的に使用されている歯科用レジンモノマーの脳活動への影響も事前に評価し、その研究成果を英文査読付学術誌であるJournal of Oral Biosciencesで公開することができた。 以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1) 2020年度までに得られた研究成果を取りまとめ、2021年度中の英文査読付学術誌への採択を目指す。論文査読で追加実験が求められる場合にはそれに対応する。 2) 行動課題遂行中の脳活動に光刺激や電気刺激によって人為的な摂動を与えてMBSを変化させることで、ラットの行動戦略に対するMBSの因果的な関わりを証明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に研究代表者が東京医科歯科大学から北海道大学へ異動し、動物実験計画の承認や実験施設の整備のために数ヶ月の間、動物実験を実施することができなかったことから消耗品の購入が予定よりも少なくなり、次年度使用額が発生した。次年度使用額は2021年度に実施する動物実験の消耗品購入等に使用する計画である。
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