研究実績の概要 |
脳のしくみを理論的に理解するには、脳機能がどのような法則で実現されるのか調べる脳アルゴリズム研究が重要であるが、多数のニューロンから記録された大規模神経活動データをどのように活用してアルゴリズム解明に繋げるかは大きな課題である。本研究では、左右二択課題遂行中のラットから数百個規模のニューロンに由来する神経活動データを取得し脳アルゴリズムを調べた。行動実験では選択試行間に妨害試行を挿入することでワーキングメモリー(WM)への負荷を変化させた。WM負荷がない時のラットの行動戦略はwin-stay, lose-shift(WSLS)型であったのに対して、負荷があるときの戦略は強化学習型に変化した。大脳皮質-基底核ループの内、運動系ループを構成する一次運動野と背外側線条体、および前頭系ループを構成する前頭前皮質と背内側線条体からマルチユニット記録を行動実験中に行った。ニューロンのスパイク頻度の時間長を考慮したポアソン回帰手法を開発しラットの左右選択行動との関連を解析した。その結果、運動系ループではWM負荷がない連続的に選択試行を行う状況で直前に選んだ選択肢とその結果についての情報が神経活動に保持されており、WSLS型の行動戦略を反映したシグナルが検出された(Yoshizawa, et.al., The 44th Annual Meeting of the Japan Neuroscience Society, 2021)。より詳細な神経情報処理機構に迫るために、背外側線条体に投射する一次運動野の神経活動を選択的に記録することとし、軸索末端集積型チャネルロドプシン2を用いた光刺激コリジョン試験の開発を行なった (Hamada, Nagase, Yoshizawa, Hagiwara, et.al., Commun Biol., 2021. Contributed equally)。
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