研究課題
1.ゼブラフィッシュにおけるフェロモン刺激による血中ホルモン濃度変化の測定ゼブラフィッシュに対し、ビデオ撮影により行動を記録しながらフェロモン候補物質による嗅覚刺激を行い、翌日に採血して血中のホルモン濃度を質量分析により測定する方法の確立に取り組んだ。インキュベーター内で他の情報を遮断しながら小型カメラでビデオ撮影を行い、匂い物質を飼育水中にインジェクションすることで匂い刺激を行い、翌日にゼブラフィッシュから全血採血を行った。質量分析により血中のアンドロゲンおよびDHPの量を測定し、刺激有無による変化を調べた。しかし、実験を行ったいくつかの条件では調べたホルモンにおいては有意な変化が見られなかったため、引き続き条件を検討する必要がある。2.ゼブラフィッシュ成魚における脳内神経ペプチド発現アトラスとデータベースの公開フェロモンにより活性化されるニューロン群の機能特定のためには、マーカー遺伝子を特定する必要がある。マーカー遺伝子同定のためのツールとして、ゼブラフィッシュの成魚において38種類の神経ペプチドと、興奮性/抑制性ニューロンマーカー遺伝子の発現をin situ hybridizationによりマッピングし、脳の切断面ごとの発現アトラスとしてまとめた。また、すべての染色データを共同研究によりデータベースとして公開した。本年度は終脳のデータの解析を行い、ゼブラフィッシュの発現データをマウスの発現データと比較することで、発現パターンがよく似ている神経核を複数見出した。また、視床下部の発現データをこれまでの参照用アトラスよりもより細かく分けた領域ごとに記録し、クラスター解析することで、これまでの参照アトラスよりも遺伝子発現パターンと合致する領域の分け方を見出した。
2: おおむね順調に進展している
神経ペプチド発現アトラスとデータベースについて、論文を投稿し、レビューアーコメントをもとに追加解析を行い再投稿することができた。この過程でゼブラフィッシュとマウスの終脳の比較やゼブラフィッシュ視床下部の領域わけの更新の提案等今後の研究に役立つ解析結果を得ることができた。また、研究計画に基づき、フェロモン刺激による生理状態をモニターする方法の確立にも成功したことから、おおむね順調に進んでいるとした。
フェロモン刺激による血中ホルモン濃度の変化の測定を、フェロモンの濃度や魚の条件を変更して続行することで、フェロモンにより血中ホルモン濃度が変わる効果(フェロモンのプライマー効果)を検証できる条件を見出す。効果的な条件が見つかった場合、その際の行動ビデオの撮影、脳のサンプリング・下垂体のサンプリングを同時に行うことで、行動の変化、脳の神経活動の変化、下垂体の遺伝子発現の変化をモニターする。これらによりゼブラフィッシュにおけるプライマー効果の神経回路の全貌を明らかにする。血中のホルモン濃度の変化がいずれの条件でも見られなかった場合は、着目している性フェロモン候補物質が、性フェロモン以外の機能をもっている可能性が考えられる。その場合は投与時の行動変化および脳活動の変化からその機能を予測し、検証する。
本年度8月より理化学研究所研究員から東北大学助教へと移動したため、予定していたゼブラフィッシュを用いた実験の一部を行うことができなかった。また、論文投稿を前年度末に行い、レビューアーコメントが返ってきたためそれに基づき追加解析作業を行った。行った作業が再実験ではなく、データの追加解析であったため出費が少なくなった。論文が無事採択され、また東北大学においてもゼブラフィッシュを用いた実験ができる環境を整えたため、来年度中に追加の実験を行う予定である。
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the Journal of Comparative Neurology
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10.1002/cne.25619
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