研究実績の概要 |
海馬はエピソード記憶など過去の体験についての記憶に必須の脳部位である。しかしながら、その一般的な役割については十分に明らかにされていない。近年、マウスを用いた研究によって海馬はそうした記憶を実現するための痕跡を内包していること、そしてその記憶痕跡は一種類ではなく、コードする情報の種類や表現様式の異なる複数の痕跡が混在していることが分かってきた(例. Tanaka et al., Science 2018; Josselyn and Tonegawa, Science 2020)。特に、記憶記銘時の最初期遺伝子c-Fosの発現により定義される所謂記憶エングラムは、動物が経験する文脈についての情報をコードしているとみられている。本研究では、記憶エングラムがコードしうる文脈記憶の境界条件を探ることにより、記憶に対する海馬のより一般的な機能の理解を目指す。具体的には、空間内の特定の位置が特別な意味を持つときの文脈情報としての位置情報や、動物の内部状態についての情報などが文脈記憶として記憶エングラムにコードされるのか、そしてどのように表現されるのかを探る。 本会計年度は、新しく主催する沖縄科学技術大学院大学での研究室設営と、獲得した神経活動データの解析(Caイメージングデータ)に取り組んだ。活動データの解析パイプラインの確立は順調に進んでおり、今年度中の論文投稿を目指している。
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