研究課題/領域番号 |
19K16306
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉野 達彦 北海道大学, 薬学研究院, 講師 (50756179)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コバルト / C-H活性化 |
研究実績の概要 |
まずはC(sp3)-H結合の活性化が可能であることがわかっているチオアミドを基質として、一電子酸化/還元をともなう反応条件を種々検討した。しかし予想に反して目的とするC-H官能基化反応は進行せず、基質の損壊を確認するのみであった。予想以上にチオカルボニル型の配向基が酸化的な反応条件に不安定であることが判明したため、エキソ型の窒素系配向基や、アミドなどの通常のカルボニル基を配向基の利用も検討したが、これらの場合でも反応は進行しなかった。そこでまずはC-H結合の活性化が進行しているか、中間体メタラサイクルの反応性や安定性はどの程度かなどの知見を得るべく、量論反応や重水素交換実験をおこなったが、アミド配向基等の場合では、C-H結合の切断が起きていない、またはそれによって生じたメタラサイクル中間体が安定すぎることが示唆された。現在どちらが原因であるかを追求すべく、別法にてメタラサイクル中間体の合成・単離を検討しているところである。 また配向基を持たない、より合成的に利用しやすい基質として、単純アルケンのアリル位C-H官能基化も検討した。しかし予想に反し、この場合ではコバルトの高いLewis酸性により、通常は進行しにくい単純アルケンのene反応型の反応が速やかに進行することがわかった。目的とするC-H活性化型の反応ではなかったものの、コバルト触媒の新たな有用性を見出すことができたと考えている。 さらにC(sp2)-H官能基化反応ではあるが、イミデート基がC-Hアリル化に有効な配向基であることを見出した。温和な条件でC-H官能基化が進行することがわかったため、C(sp3)-H官能基化への応用を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予想以上に反応に用いることのできる基質の制約が強く、反応条件の検討や原因の調査に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
検討の方向を2つにわける。すなわちC(sp3)-H活性化に用いることのできる基質の探索と、メタラサイクルの生じる新たな活性化法の確立を独立して進める。前者は引き続きアミドなどの構造変換を続ける。後者は一度C(sp2)-H官能基化に立ち戻って、これまでコバルト触媒では報告されていない新しい変換反応の検討を、予定していた一電子酸化を伴う反応条件を利用して検討する。それにより、その後C(sp3)-H官能基化へと利用できる知見を得ることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の初期検討において想定外に時間を要しており、試薬や消耗品の購入に関しても合わせて遅れがでている。また新型コロナウイルスの影響で年度末にかけて、物品の購入の遅れや、学会の中止等があったことも影響している。次年度はこの分の試薬や器具の購入をしつつ研究を進めていく。
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