ω-3系脂肪酸の代謝物であるレゾルビンE類(RvEs)は極めて強力な抗炎症活性を有するため、新規抗炎症薬のリード構造として注目されている。しかしながら、非常に不安定で生体内ではω末端およびその周辺部位が酸化されるω酸化により不活性化されてしまう。この不安定性が影響し、詳細な作用機序の解明や構造活性相関研究が進んでいない。本研究では生体内で代謝が起こるω末端に置換基を導入することにより、生体内におけるRvEsの不活性化を抑制できると考えた。すなわち、RvEsのω末端に置換基を有する誘導体の効率的な合成法を確立し、置換基の立体的・電子的性質が抗炎症活性および酸化的安定性にどのように影響するのかを明らかにする。そして、抗炎症活性を維持したω酸化に対して安定なRvEs誘導体の創出を目的としている。 前年度まではRvE1とRvE2のω末端誘導体を効率的に合成するための合成経路の確立を目指した。収率やEZ選択性に課題は残ったものの、それぞれの合成に必要な重要中間体を合成し、それらの連結に成功した。 最終年度はRvE1のEZ選択性向上を目指したが、中間体の合成過程でアルケンが異性化してしまっていたことが明らかになった。アルケンの異性化を回避するために合成経路を変更し、問題となった反応を合成前半に行うことで、異性化することなく望みの重要中間体を合成した。その後、他の中間体との連結にも成功している。また、RvE2に関しては高選択的に3つの重要中間体の連結反応が進行し、形式全合成が完了している。 今後はアルケンのEZ選択性および収率の向上を行い合成経路を確立する。その後、様々なω末端誘導体を合成し、活性評価および安定性試験を行っていく。
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