研究実績の概要 |
様々な有機化合物に遍在する sp3炭素-水素結合を遷移金属触媒により直截的に官能基化する反応は,アトムエコノミー・ステップエコノミーに優れた有用な手法である.しかしながらこれまでの報告は,金属や超原子価ヨウ素,過酸化物等の酸化剤を当量以上用いており,安価な試薬を用いた廃棄物を出さない新規化学プロセスの開発が求められている.今回申請者は,銅と酸素分子から形成される copper oxo 錯体を用いることで,分子状酸素を酸化剤とした C(sp3)-H 結合官能基化による新規複素環骨格構築法の開発を計画し,研究を行った. 検討の結果,2-isopropyl-N-phenylbenzamide を基質とし,銅触媒:CuOAc 10 mol%,リガンド:DMAP 10 mol%,溶媒:1,2-dichloroethane,反応温度:100℃,酸素雰囲気下 (1 atm) にて反応を行うことで,目的のイソインドリノン体ではなく,アミドの酸素原子から環化反応が進行したと考えられるベンゾラクトン骨格が良好な収率にて得られることが分かった.これは,銅触媒と分子状酸素によって,ベンジル位のC(sp3)-H 結合官能基化が可能であることを示唆する結果であるといえる.また,2-benzyl-N-phenylbenzamide を基質とし,同様の条件に付したところ,目的のイソインドリノン体のベンジル位が更にヒドロキシル化された化合物が得られることが分かった.今後,過剰酸化を抑制するため,酸素分圧等,更なる反応条件の検討を行っていく.
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