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2019 年度 実施状況報告書

新規生物活性化合物の創出を目指したジヒドロ-β-アガロフラン類の網羅的全合成

研究課題

研究課題/領域番号 19K16311
研究機関東京大学

研究代表者

萩原 浩一  東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任助教 (20804371)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワード有機化学 / 天然物合成 / セスキテルペン / 生物活性化合物 / 網羅的合成
研究実績の概要

ジヒドロ-β-アガロフラン類は、特異に縮環した3環性共通骨格を有する天然物群である。これらは、共通骨格上の酸素官能基の違いにより、多様な生物活性を発現する。特に含ピリジンマクロ環を有するアガロフラン類は有用かつ強力な活性を示す。そのため、ジヒドロ-β-アガロフラン類は医薬品のリード化合物として大きく注目されている。しかし、その複雑な構造ゆえに化学全合成が困難であるため、量的供給法が確立されておらず、詳細な構造活性相関研究は未踏である。このような背景を踏まえ、本研究は①含ピリジンマクロ環を有するアガロフラン類の全合成による高酸化度アガロフラン類の網羅的合成法の確立および、②確立した合成法に基づいた効率的な類縁体合成による新規生物活性物質の創製を目的とする。
本年度は、ジヒドロ-β-アガロフラン類の中で、含ピリジンマクロ環を有さないものの、最も高い酸化度を有する天然物であるオイオニミノールオクタアセタートの初の不斉全合成を達成した。すでに合成していたB環を有する化合物に対し、エーテル環化によるC環の構築および閉環メタセシスによるA環の構築を経て、標的天然物を全合成した。本研究成果は、含ピリジンマクロ環を有する高酸化度アガロフラン類の網羅的全合成に向け、極めて重要である。本合成に用いた合成中間体は、含ピリジンマクロ環の導入と天然物中の様々なアシル基の位置選択的導入に必要な酸素官能基および脱保護条件が異なる保護基を有している。すなわち、本合成中間体を用いることで、高酸化度アガロフラン類の網羅的合成を実現できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、アガロフラン類の中で、含ピリジンマクロ環を有さないものの、最も高い酸化度を有する天然物であるオイオニミノールオクタアセタートの初の不斉全合成を達成した。
すでに合成を達成していたB環を有する化合物に対し、エーテル環化によるC環の構築を経て、閉環メタセシス前駆体であるジエンヘ導いた。閉環メタセシス反応は、ジエンの反応性の低さが原因で困難であったが、触媒と溶媒の検討を行うことで、収率よく反応を進行させ、アガロフラン骨格の構築を実現した。最後に、立体選択的な酸素官能基の導入とアセチル化を経て、オイオニミノールオクタアセタートの全合成を達成した。本研究成果は、含ピリジンマクロ環を有するアガロフラン類の網羅的全合成に向け、極めて重要である。本合成に用いた合成中間体は、含ピリジンマクロ環の導入と天然物中の様々なアシル基の位置選択的導入に必要な酸素官能基および脱保護条件が異なる保護基を有している。すなわち、本合成中間体を用いることで、高酸化度アガロフラン類の網羅的合成を実現できる。そのため、本研究は、当初の計画通り、おおむね順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

まず、含ピリジンマクロ環を有するアガロフラン類の全合成により、高酸化度アガロフラン類の網羅的合成法を確立する。現在までに、含ピリジンマクロ環の導入および天然物中の様々なアシル基の位置選択的導入に必要な酸素官能基および脱保護条件が異なる保護基を有する化合物を合成している。本化合物に対し、エボニン酸を縮合させ、共通中間体へ導く。最後に、保護基の除去と位置選択的なアシル化を行い、ヒッポクラテインI、エベニホリンE-II、ハイポニンBの全合成を達成する。
続いて、構造活性相関研究へと展開し、アガロフラン骨格上のアシル基の数・種類により発現する生物活性の種類が制御されるという仮説を検証する。ヒッポクラテインI、エベニホリンE-II、ハイポニンBの構造を見ると、6つのアシル基のうち、4-5つがアセチル基で、残る1-2つが異なるアシル基であるが、その位置は天然物によって異なる。そこで、本研究で確立するアガロフラン類の網羅的合成法を応用して、アセチル基以外のアシル基を1つもしくは2つ導入したすべての位置異性体を合成する。本手法を用いれば、1つのアシル基が異なる誘導体を6種類、2つのアシル基が異なる誘導体を15種類合成できる。アシル基としては、エベニホリンE-II、ヒッポクラテインI、ハイポニンBの構造に含まれるベンゾイル基、メチルピリジノイル基またはフロイル基を用い、各種人工類縁体を合成し、生物活性を評価する。これにより、アシル基の種類および位置の違いによる生物活性の差異を明らかにできる。得られた知見を基に、3種類以上のアシル基を含む誘導体を設計・合成することで、天然物よりも強力な生物活性分子を創製する。

次年度使用額が生じた理由

当初の計画を変更し、全合成ルートの構築を主眼に置き、大量合成ではなく、少量スケールでの合成終盤の実験を中心に行った。そのため、当初の計画より、有機合成試薬・有機溶媒や精製用シリカゲルへの経費を大幅に抑制できたため、次年度使用額が生じた。次年度は、様々なアガロフラン類の合成に向けた基質の大量合成を行うため、もともとの請求した使用額に加え、次年度使用額分の金額も必要になる。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件)

  • [雑誌論文] Total Synthesis of Talatisamine2020

    • 著者名/発表者名
      Daiki Kamakura, Hidenori Todoroki, Daisuke Urabe, Koichi Hagiwara, Masayuki Inoue
    • 雑誌名

      Angewandte Chemie International Edition

      巻: 59 ページ: 479-486

    • DOI

      10.1002/anie.201912737

    • 査読あり
  • [学会発表] ブファジエノリド類の全合成2020

    • 著者名/発表者名
      ○清水慎介、萩原浩一、井上将行
    • 学会等名
      日本薬学会 第140年会
  • [学会発表] バトラコトキシンの全合成研究2020

    • 著者名/発表者名
      ○鎌倉大貴、武藤大之、渡邉祐基、萩原浩一、井上将行
    • 学会等名
      日本薬学会 第140年会
  • [学会発表] オイオニミノールの全合成研究2019

    • 著者名/発表者名
      ○王瀛華、永井利也、萩原浩一、井上将行
    • 学会等名
      第115回有機合成シンポジウム
  • [学会発表] Total Syntheses of Bufadienolides2019

    • 著者名/発表者名
      ○Shinsuke Shimizu, Koichi Hagiwara, Masayuki Inoue
    • 学会等名
      27th International Society of Heterocyclic Chemistry Congress
    • 国際学会
  • [学会発表] タラチサミンの全合成2019

    • 著者名/発表者名
      ○鎌倉大貴、萩原浩一、井上将行
    • 学会等名
      第61回天然有機化合物討論会
  • [学会発表] Synthetic Study of Puberuline C2019

    • 著者名/発表者名
      ○Tsukasa Shimakawa, Koichi Hagiwara, Masayuki Inoue
    • 学会等名
      Junior ICCEOCA-9
    • 国際学会
  • [学会発表] Synthetic Study of Puberuline C2019

    • 著者名/発表者名
      ○Tsukasa Shimakawa, Koichi Hagiwara, Masayuki Inoue
    • 学会等名
      ICCEOCA-14
    • 国際学会
  • [学会発表] Total Synthesis of Talatisamine2019

    • 著者名/発表者名
      ○Koichi Hagiwara, Daiki Kamakura, Hidenori Todoroki, Daisuke Urabe, Masayuki Inoue
    • 学会等名
      The 19th Tateshina Conference on Organic Chemistry
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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