病原性細菌の感染機構や病原性発現機構を標的とした薬剤は、抗菌活性を示さない新たな感染症治療薬になると期待される。北里生命科学研究所では新たな創薬標的として、グラム陰性病原性細菌に特徴的な病原因子移行システム「III型分泌装置(T3SS)」に着目し、微生物培養液からT3SSを阻害する化合物の探索を行ってきた。その結果、オーロドックス類が新たにT3SS阻害活性を示すことを見出した。応募者は本化合物群の構造及び活性に注目し、オーロドックス類の収束的全合成を確立ならびに全合成手法を用いて重要なファーマコフォアの探索や抗菌活性とT3SS阻害活性の分離の検証を行い、新たな感染防御薬の創製を指向する。 本申請研究は、グラム陰性病原性細菌に特徴的な病原因子移行システム「III型分泌装置(T3SS)」を特異的に阻害する天然有機化合物の合成研究を行うことで『薬剤耐性菌を出現させない新たな感染症治療薬の創出』を指向する。病原性細菌の感染機構や病原性発現機構を標的とした薬剤は抗菌活性を示すことなく、感染源若しくは病原性因子移行のみを阻害する。故に薬剤耐性菌(AMR)が出現しない新たな感染症治療薬になると期待される。当研究所独自の生物活性物質探索により見出された特異的阻害剤を基盤として、世界に先駆けて行う独自性の高い研究である。 加えて、新たな高T3SS阻害活性化合物を見出せれば、in vivo試験や標的タンパク質との共結晶構造解析など創薬研究に展開し、感染症治療薬開発における新たな薬剤標的を見出す。
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