研究実績の概要 |
細胞内中性脂質蓄積阻害剤である真菌由来化合物ダイナピノンA (DPA) は、2つの軸異性体 (DPA1, M体とDPA2, P体) の1:1の混合物 (DPAmix) が最大の活性を示すというこれまでに前例のない生物活性を示す。本研究では、DPAの作用機序を解明するために、標的分子がタンパク質であると想定し、DPA結合タンパク質の探索を行った。一般的には、化合物を誘導体化したケミカルプローブを用いた標的分子の探索が行われるが、DPAは誘導体化により、活性を消失してしまう。そこで、プローブ化を必要としない手法としてCellular Thermal Shift Assay (CETSA, Science 341, 84 (2013) の手法) を応用し、2次元電気泳動を用いることで、DPA1、DPA2およびDPAmixそれぞれに対応する結合タンパク質の探索を行った。その結果、DPAmix処理により顕著にバンドパターンが変化したタンパク質を3つ見出した。その中の1つであるprohibitin (PHB1) について、先行研究で脂肪滴 (中性脂質を貯蔵する細胞内小器官) の形成への関与が報告されていたことから、DPAの活性との関連性があると考え、さらに研究を進めた。しかし、siRNAを用いたPHB1ノックダウン細胞やPHB1過剰発現細胞におけるDPAの活性に変化が認められなかったことから、DPAの標的分子はPHB1ではないことが示唆された。 並行して、微生物資源より中性脂質代謝を制御する化合物を探索し、中性脂質の一つであるコレステリルエステル蓄積阻害剤として発見した新規化合物について学会発表・論文発表を行なった。
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