研究実績の概要 |
細胞内中性脂質蓄積阻害剤である真菌由来化合物ダイナピノンA (DPA) は、2つの軸異性体 (DPA1, M体とDPA2, P体) の1:1の混合物 (DPAmix) が最大の活性を示すというこれまでに前例のない生物活性を示す。DPAが示す表現型は、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞やHeLa細胞、HepG2細胞など複数の細胞株で認められる (活性が最も明確に確認できるのはCHO細胞)。本研究では、DPAの作用機序を解明するために、標的分子がタンパク質であると想定し、DPA結合タンパク質の探索を進めた。DPAは誘導体化 (ケミカルプローブ化) によりその活性を消失してしまうことから、それを必要としない手法を応用することとした。前年度までに、CHO細胞を用いて、Cellular Thermal Shift Assay (CETSA, Science 341, 84-87 (2013)) を応用し、DPA1、DPA2およびDPAmixそれぞれに対応する結合タンパク質を取得したが、活性と直接的に関連するタンパク質ではないことが推定された。そこで本年度は、細胞種を変えて、HeLa細胞からのCETSA法を用いた結合タンパク質の探索、および解析手法を変えて、CHO細胞から、最近報告されたsolvent-induced protein precipitation (SIP, Anal. Chem. 92, 1363-1371 (2020)) を応用した結合タンパク質の探索をそれぞれ行なった。その結果、DPAmixで処理した際に特異的に結合が認められるタンパク質バンドを、前者からは1つ、後者からは3つ見出し、LC-MS/MS解析によりタンパク質を同定した。また、DPAに次ぐ、細胞内中性脂質蓄積阻害剤を微生物資源より探索し、見出した化合物について論文発表した。
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