最終年度の主な研究実績として、これまでに合成したKeap1-Nrf2システム制御剤の細胞内Nrf2活性化作用を網羅的に評価した。Nrf2の標的遺伝子としてルシフェラーゼを組み込んだ培養細胞株 HEK293-ARE-Luc を用い発光輝度を指標にNrf2活性化作用を評価したところ、KMN003と命名されたカルボン酸誘導体に非常に強力な活性を見出した。また、昨年度までの研究において見出した、p62-Keap1タンパク質間相互作用を阻害し抗がん剤の作用増強効果を示すユニークな誘導体 KIY005 も KMN003 に匹敵するNrf2活性化効果を有することを明らかとした。特に KIY005 は、p62が高発現しNrf2の異常活性化したがん細胞においてはNrf2抑制効果を、その他の正常細胞においては Nrf2 の活性化効果を示し、抗がん剤の作用を増強しつつ副作用の予防にもつながる医薬品のシーズとして有望であると考えられる。 研究期間全体を通じて、次の3点の成果をあげた。1、Nrf2抑制剤 KOA153 がNrf2異常活性化肝細胞癌株Huh-1に対しソラフェニブ感受性増強作用を示すことを明らかとした。2、Nrf2抑制剤 KIY005 が非小細胞肺がん株 A549 においてドキソルビシン感受性増強作用を示すことを明らかとした。3、KMN003 及び KIY005 が細胞内において強力な Nrf2 活性化作用を示すことを明らかとした。
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