研究実績の概要 |
本研究では、タンパク質の構成要素でもあるアミドの相互変換に着目し、5員環側が負の、7員環が正の性質を示すアズレンを組み込んだN,N-ジアリール型芳香族アミドの立体構造特性に関する知見を通じて、芳香族アミド化合物の立体優先性に基づく分子の予測・制御を目指している。 これまで、一連のアズレンを組み込んだN,N-ジアリール型芳香族アミドの合成を行い、これらの結晶および溶液中における立体挙動について検討した。これらの解析結果から、アズレンを組み込んだN,N-ジアリール型芳香族アミドの立体優先性は、アミド窒素上の2つの芳香環の電子密度差に依存するものの、アミド窒素上の芳香環の大きさの違いによるアミドカルボニル周辺の立体環境変化により大きく影響を受けていることが示唆された。そこで、アミド窒素上の芳香環の大きさが芳香族アミドの立体優先性に与える影響について明らかにするため、環サイズの異なる複素環をアミド窒素上に導入した複素環含芳香族アミドをデザインし、これらの立体構造特性について検討した。複素環含芳香族アミド化合物は、これまでに報告している合成法に基づいて合成し、良好な収率で得た。合成した化合物についてNMRおよびX線結晶構造解析を行った結果、溶液および結晶中における立体構造が明らかとなり、アミドカルボニル周辺の立体環境に関する新たな知見が得られた。現在、これら化合物の系統的な比較解析を通じ、環サイズの違いによる芳香族アミドの立体優先性への影響について検討を行っている。また、複素環をアミド窒素上に導入したN,N-ジアリール型芳香族アミドに関する構造解析から、分子内相互作用による立体構造の安定化への寄与を明らかにし、さらにその度合いを見積もることができるようになった。
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