研究実績の概要 |
タンパク質の構成要素であるアミドの相互変換に着目し、芳香族アミド化合物の立体優先性に基づく分子の予測・制御を目指している。本研究では、5員環側が負の、7員環が正というアズレンの特異な電子状態に着目し、アズレンを有するN,N-ジアリール型芳香族アミドの立体構造について検討した。 最初に置換位置の異なるN-アズレニル芳香族アミドの合成を検討した。一部の合成中間体において不安定な化合物もみられたが、反応条件を精査することで効率的に必要な化合物群を得ることができた。得られたN-アズレニル芳香族アミドについて、溶液および結晶中の立体挙動について検討した。その結果、アズレン環の置換位置の違いによりこれらの立体優先性に影響を及ぼすことがわかった。そこで、更にこれらについて比較検討するため、複素環を導入したN,N-ジアリール型芳香族アミドについて検討を行った。これまでと同様の手法を用いて必要な化合物群を合成し、立体構造特性について検討した結果、立体構造およびその安定化に関する新たな知見が得られた。また、一部のN-アズレニル芳香族アミドにおいて、それらの安定性や最適条件等について検討する必要があるものの、外部環境による性質の変化に関する知見も得られた。今後、以上の知見を基に一連の芳香族アミド化合物について系統的な解析を行うことで、化合物の立体予測・制御へと適用できることが期待される。 新型感染症の感染拡大の防止に伴う研究活動の制限により当初の計画に遅れが生じていたが、研究期間を延長し徐々に実験を再開することで研究を進めることができた。また、本研究成果の発表については、国内外の学会等の開催が不安定であったことから、当初予定していた海外における発表を見送り、追加実験の費用として用いた。
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