ユビキチン(Ub)化は翻訳後修飾の一種であり、その機能はUbの持つ7つのリジン残基のどれに結合していくかに依存する。最も一般的なUb化は48番目のリジン残基で結合するタンパク質分解シグナルだが、その他の特殊なUb化については不明点が多い。特殊なUb化は様々な生命現象や疾患に関与しており、その機能解析が求められる。そこで本研究では、特殊なUb化の解析に有用な手法の開発を志向し、特殊なUb化誘導剤の創製を試みる。過去に有機小分子によるK48型Ub化誘導手法「プロテインノックダウン法」に関する研究を行っており、本研究ではプロテインノックダウン法の理論をK48型からその他の特殊なUb化へ拡張し、特殊なUb化誘導剤の設計、合成、活性評価を行う。 前年度までにcIAP1のRIP1に対するK63Ub化活性に着目し、これを誘導する化合物の創製を目指していたが、所望の結果を得ることができなかった。そこで本年度は、特定のユビキチンリガーゼを利用するのではなく、タンパク質に疎水性構造を付与することで特殊なUb化が起きることを期待し、疎水性タグ化合物の創製を進めた。凝集性タンパク質であるmHttを標的タンパク質とした。疎水性構造であるアダマンタンとタンパク質凝集体結合構造を連結した化合物を合成し、活性評価を行ったところ、この化合物がmHttの存在量を顕著に減少させることを見出した。本成果は国際学会で発表し、国際的学術誌に論文として掲載された。
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