TEMPO 等のニトロキシル型酸化触媒は実用的なアルコールの酸化触媒としてよく知られている。一般的なニトロキシル型酸化触媒は基質の立体的な環境を識別し、第二級水酸基存在下、第一級水酸基を選択的に酸化する。本研究は基質の電子的環境を識別するニトロキシル型触媒により、第一級水酸基存在下での第二級水酸基選択的酸化反応を実現しようとするものである。 前年度は、電子求引基であるメチルエステル基を1つ持つニトロキシル型触媒による4-[3-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]ブタン-2-オールの第二級水酸基選択的酸化を達成した(収率:76%、化学選択性:97%)。本年度は、本反応の収率向上を試みて、ビシクロ環を有する新規触媒を合成したが、収率向上には至らなかった。 また、前年度、メチルエステル基を2つ持つ触媒が、アルコールのp-メトキシベンジル保護基の酸化的脱保護に有用であることを明らかにしていた。本年度は、p-メトキシベンジル基以外のベンジル系保護基の脱保護へと展開し、ベンジル基、ナフチル基、4-メチルベンジル基、ナフトキシメチル基などの酸化的脱保護が可能であることを明らかとした。 さらに、このジエステル型触媒がテトラヒドロナフタレンのベンジル位を酸化できることも明らかとした。テトラヒドロナフタレンのベンジル位は酸素原子による活性化を受けておらず、本触媒がヘテロ原子による活性化を受けていないC-H結合の酸化にも有効な触媒であることを示すことができた。
|