研究課題/領域番号 |
19K16330
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
伊藤 勇太 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (90783225)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 5-トリフルオロメチルピリミジン塩基 / オリゴ核酸 / 三重鎖形成核酸 |
研究実績の概要 |
オリゴ核酸中のピリミジン塩基の5位に導入したトリフルオロメチル基を酸素および窒素求核剤と反応させると、様々なカルボン酸誘導体へと変換されることが我々の以前の研究から明らかになった。そこで、本研究ではトリフルオロメチル基の特異な反応性を利用して機能性オリゴ核酸を創出することを目的とする。これを実現するために、本年度は以下の実験を行った。 求核剤としてオルト位にヘテロ原子を有するアニリン誘導体を用いてトリフルオロメチル基の化学変換を検討した。まず、2’-デオキシ-5-トリフルオロメチルウリジンをアニリン誘導体で処理したところ、トリフルオロメチル基が対応する複素環へと変換された。ヌクレオシドを用いた場合にピリミジン塩基の5位へと複素環を導入できることが確認できたので、続いてオリゴ核酸上での化学変換を検討した。その結果、ヌクレオシドと同様の条件下では反応が進行しないことが明らかとなった。そこで、反応条件を種々検討したところ、塩基存在下で反応が促進され、5位に複素環の導入されたウラシルを有するオリゴ核酸の合成に成功した。一方で、5-モノフルオロメチルおよび5-ジフルオロメチルウラシル含有オリゴ核酸も機能性オリゴ核酸の創出に利用できると期待し、これらのアミダイト体の合成とオリゴ核酸への導入にも成功した。さらに、合成したオリゴ核酸をいくつかの求核剤で処理したところモノフルオロメチル基およびジフルオロメチル基の化学変換が進行し、ウラシルの5位に様々な官能基を有するオリゴ核酸の合成を達成した。 また、求核剤としてシステインを用いて5-トリフルオロメチルウラシル含有オリゴ核酸との反応を検討したところ、詳細な構造は未決定であるもののシステインをトラップすることが確認された。本結果は、5-トリフルオロメチルピリミジン導入オリゴ核酸はペプチドやタンパク質もトラップできる可能性があることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は5-トリフルオロメチルウラシル含有オリゴ核酸中のトリフルオロメチル基を複素環へと変換することに成功した。金属触媒を用いずにオリゴ核酸中のピリミジン塩基の5位に複素環を導入する手法はこれまでに報告例のないことから、今後様々な機能性オリゴ核酸の創出に繋がると期待される。しかし、5-トリフルオロメチルシトシン含有オリゴ核酸への適用が未達成であることや得られたオリゴ核酸の物性評価まで至らなかったことから、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度である2020年度は以下の研究を実施する。 5-トリフルオロメチルシトシンを有するオリゴ核酸のトリフルオロメチル基変換反応を検討し、シトシン塩基5位への複素環の導入を試みる。さらに、得られたオリゴ核酸と相補的な二重鎖核酸との融解温度測定を行い、高い三重鎖形成能を有するオリゴ核酸を見出す。 また、2019年度の研究でトリフルオロメチルウラシル含有オリゴ核酸がシステインと反応することを確認したので、様々なアミノ酸との反応を行い、5-トリフルオロメチルピリミジンがシステインを選択的にトラップできるか検討する。最終的には、in vitroにおいて5-トリフルオロピリミジン塩基を有するオリゴ核酸を利用してDNA結合タンパク質を不可逆的に阻害する手法を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
5-トリフルオロメチルシトシン含有オリゴ核酸の化学変換と合成したオリゴ核酸の物性評価の実施に至らなかったため、その分の消耗品費の残金が生じた。次年度にこれらの検討を行う予定であり、その際に使用する。
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