研究課題/領域番号 |
19K16339
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
蛭田 勇樹 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (60710944)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | セラノスティクス / 蛍光イメージング / 光熱療法 / スピロ環化平衡 / 刺激応答性ポリマー |
研究実績の概要 |
光熱療法(photothermal therapy; PTT)は近赤外吸収を持つ光増感剤が吸収した光を熱エネルギーに変換することを利用して、強い近赤外光を照射した部位を特異的に発熱させ、がんを死滅させる方法である。この効果を高めるためには、固形がんへの光増感剤の集積性を高めることと、集積の可視化が重要となる。2020年度は、シアニン系色素であるIR-780を母骨格としたpH応答性近赤外蛍光プローブを両親媒性ポリマーに内包したpH応答性PTTプローブを開発した。 分子内スピロ環化平衡による蛍光のOFF/ON制御は2019年度に確立しており、さらに色素骨格に疎水性基を導入すると応答するpHが低くなり、親水性置換基を導入すると応答するpHが高くなることがわかった。このように、置換基の影響を調べることで、正常組織周辺と固形がん周辺環境でOFF/ON応答を示すために、pH応答性を制御できることが示された。pH応答性近赤外蛍光プローブをHeLa細胞にインキュベーションし、近赤外レーザーで照射した際の細胞障害性を評価した。レーザー照射のみ、プローブをインキュベーションしただけでは細胞傷害性はなかったが、プローブをインキュベーションした細胞にレーザー照射することで高い細胞傷害性が確認できた。しかし、pHに非依存的に細胞傷害性が確認された。これは、細胞中のタンパク質や脂質などの影響でpHに関係なくONの状態になったためであると考え、BSAを添加した溶液でのpH応答性を確認した。予想通り、BSAの添加によりpH応答性が失われていた。 そこで、プローブがタンパク質などの影響を受けないために、ポリマーミセル(F127)中に内包させることでpH応答性を評価した。ポリマーミセルに内包してもpH応答性を得られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標のpHで応答するpH応答性近赤外蛍光プローブを開発することができた。また、光熱療法に応用できることもわかった。
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今後の研究の推進方策 |
正常組織周辺と固形がん周辺pHにおいてHeLa細胞に対する光熱療法の効果を評価する。得られた成果は、国際学会や国際的な学術誌での発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症のため研究室の封鎖や入室制限が設けられ、十分な実験時間がとれなかった。そのため、物品費が予定よりも少なかった。また、参加予定だった学会が中止やオンライン学会への変更があり、旅費を使用しなかった。次年度は残りの実験を進めるため、試薬などの物品費、研究員の雇用のための人件費に計上する。また、学会が開催されるようになれば、旅費にも計上する。
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