研究課題/領域番号 |
19K16340
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
植村 雅子 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助教 (70511997)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 白金錯体 / 細胞内蓄積量 / 抗がん剤 / 大腸がん / オキサリプラチン耐性 / トランスポーター |
研究実績の概要 |
本研究は、テトラゾラト架橋白金(II)二核錯体(テトラゾラト架橋錯体)の細胞内蓄積に関与するトランスポーターを同定することで、テトラゾラト架橋錯体の作用機序の一端を解明し、大腸がん治療薬オキサリプラチンに対して耐性を示すがんにも有効なテトラゾラト架橋錯体の創出へ寄与することを目的とする。昨年度までに、HCT116 ヒト大腸がん細胞(HCT116細胞)のオキサリプラチン耐性 HCT116 細胞株(HCT116_R細胞)を樹立し、テトラゾラト架橋錯体では、オキサリプラチンと同様に、HCT116細胞と比べてHCT116_R細胞におけるin vitro細胞増殖抑制活性が低下し、その活性低下には、細胞内蓄積量の減少が寄与していることが分かった。 2021年度は、細胞内取り込みに関与するトランスポーターの同定を行うために、二次元電気泳動ディファレンシャル・ディスプレイ解析によって、HCT116細胞およびHCT116_R細胞間の発現タンパク質量の差を明らかにした。本解析によって同定した3,777種のタンパク質のうち、HCT116_R細胞において発現量が1.5倍以上増加したタンパク質は189種、1/1.5以下に減少していたタンパク質は33種であった。これらのタンパク質のうち、細胞内取り込みに関与する可能性があるものは、これまでに認められていない。また、取り込み阻害物質共存下における細胞内蓄積量およびin vitro細胞増殖抑制活性の評価も並行して行った。その結果、シメチジン共存下において、テトラゾラト架橋錯体暴露6時間後の細胞内蓄積量が40分の1以下に減少し、活性が5分の1以下に低下することが分かった(オキサリプラチンではともに約3分の1以下)。これにより、テトラゾラト架橋錯体の細胞内取り込みに有機カチオントランスポーターが関与することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度内に終了する予定であった二次元電気泳動ディファレンシャル・ディスプレイ解析(受託解析)が、サンプル送付時のトラブルによって、2021年度に実験が持ち越しになった。また、阻害実験に用いる分析機器の故障により、予想以上の長い修理期間が必要となった。一つのトランスポーターの細胞内取り込みへの関与は明らかにすることができたが、上記の機器故障によって、予定していたより細胞内蓄積量の評価が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
テトラゾラト架橋錯体の細胞内取り込みに関与するトランスポーターを探索するため、2021年度に引き続き、二次元電気泳動ディファレンシャル・ディスプレイ解析によってHCT116細胞およびHCT116_R細胞間で発現量に差が見られたタンパク質の精査を行う。並行して、特定のトランスポーターに取り込まれる化合物(阻害物質)を用いて、阻害物質の有無によるテトラゾラト架橋錯体の細胞内蓄積量およびin vitro細胞増殖抑制活性の変化を明らかにする。 また、一連のテトラゾラト架橋錯体の誘導体を用いて、HCT116_R細胞におけるin vitro細胞増殖抑制活性評価を行い、オキサリプラチン耐性がんにも有効なテトラゾラト架橋錯体の創出へ必要な構造活性相関の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞内蓄積量に用いる機器におけるトラブルのため、残高が生じた。また、当初計上した旅費を使用することがなく、研究成果発表用費用も予算額より下回った。これらは、次年度で計画当初の目的通りに使用する予定である。
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