研究課題/領域番号 |
19K16341
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
高木 晃 神戸薬科大学, 薬学部, 助教 (00758980)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生物発光 / ルシフェリンアナログ / トランスヒドロシリル化 / カップリング反応 / ベンゾチアゾール |
研究実績の概要 |
2019年度研究計画に基づき以下の2つ研究を行った。 ①長波長化したルシフェリンアナログの合成 既存の2-iodo-6-methoxybenzothiazoleと2-propyn-1-olとの薗頭カップリングによりプロパルギルアルコールの導入したベンゾチアゾールを構築した。さらに得られたプロパルギルアルコールの還元によりアリルアルコールを得た後にアルコールを酸化することで共役アルデヒドの合成に成功した。その後のチアゾリン環構築が難航したため、シンナムアルデヒドをモデル基質としてチアゾリン環の構築を検討したところ、低収率ながら共役アルデヒドからチアゾリン環を合成することに成功した。今後は収率の改善を行い、実際の基質に適用および共役系の延長したルシフェリンの合成を行う。 ②遷移金属触媒を用いたトランスヒドロメタル化の検討 上記のプロパルギルアルコールを用いて、遷移金属触媒を用いたアルキンへのトランス選択的なヒドロメタル化反応の検討を行った。ルテニウム触媒を用いたトランスヒドロシリル化はベンゾチアゾールのようなヘテロ環を持つ基質でも問題なく進行し、種々の条件検討の結果、ジクロロメタン中高濃度・短時間条件で[RuCp*Cl(MeCN)3]PF6を用いるとγ位選択的にシリル基が導入されたアリルアルコールを良好な収率で得ることを見出した。今後他の金属種の導入、位置選択制の制御、導入した金属種から他の置換基へ変換反応の検討を行うことで置換基が導入された長波長化ルシフェリンアナログの合成を展開し、得られた化合物の生物発光特性を調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長波長化したルシフェリンアナログにおいては最後のチアゾリン環構築の一歩手前まで完遂しており、また遷移金属触媒を用いたトランスヒドロメタル化においては予想していたよりも早い段階で良好な結果が得られた。やや遅れている骨格構築の進捗とやや進んでいる遷移金属触媒を用いた反応の進捗を併せて考えると、当初の研究計画から大きなずれは無いと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まず長波長化したルシフェリンアナログの構築を最後のチアゾリン環の構築を検討することで完成させる。その後、置換基が導入された長波長ルシフェリンアナログの合成を行うことで多様な生物発光基質の合成を達成する。さらに多成分検出を可能とするべく、単一の活性種により脱保護される保護基の導入を試みる。 本研究では基質の合成と並行してルシフェラーゼを用いた生物発光の評価実験も行う。合成したルシフェリンアナログとルシフェラーゼを反応させることで、発光波長・発光強度を調べる。また、種々の活性種により活性化されるルシフェリンアナログに関してはその選択性を調べるとともに細胞実験での有用性を調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費に関しては、ガラス器具等が当初の想定よりも現存の器具が利用可能であったため、本年度の支出としては小さくなった。今後より厳密な条件での反応の検討を行うために密封性の高いガラス器具の購入に充てる予定である。試薬に関して、遷移金属触媒の検討の際に想定よりも少ない触媒で良好な条件が見つかったため、試薬購入にかかる費用が予定より少なくなった。今後変換反応に多様な触媒が必要になる可能性が高いので、変換反応用の触媒購入に充てる予定である。 旅費に関しては新型コロナウイルスの影響により中止になった学会のため、当初充てる予定であった支出が無くなったためである。状況が落ち着き次第、代わりに参加できる学会の旅費に充てる予定である。
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