研究課題/領域番号 |
19K16342
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
砂山 博文 神戸大学, 工学研究科, 特命准教授 (60706464)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 分子インプリンティング / 分子認識 / 反応場 / ポストインプリンティング修飾 |
研究実績の概要 |
本研究では分子インプリンティングと多段階ポストインプリンティング修飾(PIM)法を組み合わせた分子認識材料創製法を駆使することにより、高選択的に反応生成物を制御可能な反応場の創製を目指す。 本年度は分子インプリンティングによる反応場合成に関する検討を行った。モデル反応として2-anthracenecarboxylic acid(AC)の二量化反応を選択し、相互作用部位としてbenzamidineを有する機能性モノマーの設計合成を行った。本モノマーとACの相互作用についてはNMRにて検討を行い、Ka=10の3乗オーダーの相互作用が確認された。これを用いて沈殿重合によるMIPの作製を行った。合成した機能性モノマーとAC、架橋剤をMeOHに溶解させ、開始剤を加えて24時間反応させることで、ポリマー粒子を得た。このポリマーを適切な洗浄溶液で処理することで鋳型分子を洗浄・除去した。このポリマーの吸着特性を確認したところ、MIPは標的分子に対して濃度依存的な吸着挙動を示すことが確認され、得られた吸着等温線からScatchard解析により結合定数(Ka)を算出したところ、10の5乗オーダーとモノマーと比較して高い値を示した。これは分子インプリンティングによりポリマー内に相補的な結合空間が形成されていることが示唆される。また、参照分子として構造類似体である9-anthracenecarboxylic acidについて検討したところ、標的分子と比較して約1/4の結合力しか示さなかったことから作製したMIPは高い選択性を有していることが示唆される。 また、空間選択的なPIM技術についてこれまで実績のあるタンパク質のMIPを用いて検討を行ったところ、標的分子自身を高親和性の結合空間の保護剤として用いることにより、親和性の異なる空間毎に機能性分子を導入できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標的分子と相互作用可能なBenzamidine部位を有する機能性モノマーを合成し、これを用いて作製したMIPが高い親和性、選択性を示すことを確認した。また、PIMによる空間選択的な修飾により結合能制御といったMIPの機能調節に関する要素技術の確立にはおおむね成功している。これらの知見を基にして計画していた研究を遂行していく。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に基づいて研究を遂行する。これまでに検討した要素技術であるポリマー作製技術とPIMによる機能調節技術を基に、目的とするMIP存在下および非存在下での反応について検討、評価を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
調達方法の工夫などにより、消耗品購入費や旅費が節約できたこと、現在の社会情勢により学会の開催中止による影響、また研究の進捗状況などにより購入を見送った試薬(消費期限が設定されているもの)等のために差額が生じた。 次年度も研究計画に沿った研究費使用を行う。前年度の残額を含め、研究の進捗状況を把握しながら有機合成・高分子合成試薬、参照化合物、溶媒・ガラス器具等研究遂行に必要な物品の購入及び得られた成果の発表、情報収集のための学会参加旅費として使用する。
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