研究課題/領域番号 |
19K16343
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
古賀 鈴依子 福岡大学, 薬学部, 助教 (20804545)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | キラルアミノ酸 / 多次元HPLC分析 / 代謝関連アミノ酸 / 光学分割 / 分析化学 |
研究実績の概要 |
生体内D-アミノ酸酸化酵素(DAO)の活性評価指標による精神・神経疾患の早期かつ客観的診断を可能とするため、2020年度は分析対象を他の代謝関連アミノ酸へと拡大し、生体試料分析に向けて分析法の構築および最適化を行った。 昨年度に分析対象として選定したシトルリンおよびオルニチンに加え、リシンおよびその代謝産物である2-アミノアジピン酸およびピペコリン酸へと分析対象を拡大した。NBD-Fによりアミノ酸を蛍光誘導体化し、微粒子充填型ODSカラム(1.0 mm x 250 mm)、陰イオン交換カラム(1.5 mm x 150 mm)および2-ナフチル-L-アラニンを光学中心に有する光学分割カラム(1.5 mm x 250 mm)の異なる3種の分離モードを組み合わせた三次元HPLCを用いることにより、全ての対象アミノ酸について、生体試料における高感度かつ高選択的なキラル分析が達成された。ヒト臨床試料分析へ適用し、各アミノ酸鏡像異性体の含量解析を行った結果、対象とした全ての代謝関連アミノ酸について、ヒト尿試料中にD体が存在することが示された。一方、血漿試料においては、D-リジンおよびD-ピペコリン酸の存在が明らかとなった。 また、α炭素に加えて側鎖にアミノ基を有するオルニチンおよびリシンを分析対象として、同一の官能基を複数有する化合物の高選択的検出に有用とされるエキシマー蛍光誘導体化法を用いて分析法を開発した。対象アミノ酸をPSEにより蛍光誘導体化し、逆相分配と光学分割を組み合わせた二次元キラルHPLCにより分析した。エキシマー蛍光波長で検出することにより高選択的な分析が可能であり、ヒト尿試料および血漿試料における含量解析にも適用可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、分析対象をシトルリンおよびオルニチン以外の代謝関連アミノ酸へと拡大し、生体試料分析に向けて分析法を構築・最適化する計画であった。分析対象をリシンおよびその代謝産物である2-アミノアジピン酸およびピペコリン酸に拡大し、ヒト臨床試料における各対象アミノ酸の高感度かつ高選択的なキラル分析が可能であることが示されたため、分析対象の拡大および分析法の構築、生体試料分析に向けた最適化について当初の計画通り進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、様々なDAO活性を有するマウス尿および血中におけるキラル識別含量解析を行う。また、DAO活性評価による精神・神経疾患の客観的診断指標の開発へ繋げるため、各種疾患モデルマウスおよびヒト臨床検体を収集し、構築した多次元キラルHPLC法を用いて含量解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、国内学会および国際学会における成果発表を予定していたが、いずれも延期となったために次年度使用額が生じた。2021年度は、差額分を試料収集および成果発表に充てることを計画している。
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