研究課題/領域番号 |
19K16343
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
古賀 鈴依子 福岡大学, 薬学部, 助教 (20804545)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | キラルアミノ酸 / 多次元HPLC分析 / 代謝関連アミノ酸 / 光学分割 / 分析化学 |
研究実績の概要 |
生体内D-アミノ酸酸化酵素(DAO)の活性評価による精神・神経疾患の早期かつ客観的な診断指標探索のため、2021年度は構築した多次元HPLC分析法をマウス尿試料およびヒト尿試料の分析へと適用した。 分析対象アミノ酸は、昨年度までに選定したシトルリン、オルニチン、リジン、ピペコリン酸、2-アミノアジピン酸とした。異なる3種の分離モード(逆相分配、陰イオン交換、光学分割)を組み合わせて構築した三次元HPLCを用いることにより、生体試料における高感度かつ高選択的なキラル分析が達成された。ヒト尿試料中においては全ての対象アミノ酸鏡像異性体の存在が認められ、シトルリン、オルニチン、リジン、ピペコリン酸、2-アミノアジピン酸の%D値((D/D+L) x 100)はそれぞれ6.5%、12.7%、6.5%、1.5%、68.0%であった。また、これらのアミノ酸についてコントロールマウスおよび健常人の尿試料における%D値を比較した。その結果、オルニチンの%D値についてはマウスがヒトの2.5倍ほどの%D値(31.9%)を示した一方で、シトルリンについてはヒトとマウスにおいてほとんど同じ%D値(7.5%)を示した。更に、DAOの活性変化による尿中シトルリンおよびオルニチンの含量変化を解析するため、コントロールマウスおよびDAO欠損マウスの尿試料分析を行った。その結果、DAOの欠損に伴い、シトルリンおよびオルニチンの%D値はそれぞれ55.0%、83.3%を示し、正常なDAO活性を有するコントロールマウスと比較して尿中のD体含量が増加することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、様々なDAO活性を有するマウス尿および血中におけるキラル識別含量解析を行うとともに、DAO活性評価による精神・神経疾患の客観的診断指標の開発へ繋げるため、各種疾患モデルマウスおよびヒト臨床検体を収集し、含量解析を行う予定であった。 マウス尿試料分析によりDAO活性の変化に伴い尿中含量が変化する代謝関連D-アミノ酸を見出した他、健常人の尿試料にもマウスと同様に代謝関連D-アミノ酸が存在することを明らかにした。一方、各種疾患モデルマウス試料の収集および含量解析は未だ達成できていない。以上より、本研究課題はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、診断指標の分析対象として選定したシトルリン、オルニチン、リジン、ピペコリン酸および2-アミノアジピン酸について、引き続きヒト臨床試料を用いて含量解析を行う。また、各種疾患モデルマウス試料の収集および分析を行い、代謝関連キラルアミノ酸含量と疾患との関連を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、国内学会および国際学会における成果発表を予定していたが、いずれも延期もしくはオンラインでの開催となったこと、また、研究の遅れに伴い次年度使用額が生じた。2022年度は、差額分を試料収集および成果発表に充てることを計画している。
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