研究課題
オートファジーは、タンパク質やオルガネラをリソソーム/液胞へ輸送し分解する機構であり、分解対象物は隔離膜に取り囲まれてオートファゴソームが形成されリソソーム/液胞と融合する。酵母において、隔離膜形成には前オートファゴソーム構造体(PAS)が重要な役割を持ち、その足場はAtg1-Atg13-Atg17-Atg29-Atg31複合体によって形成されるが、これは液―液相分離して液滴となる。本研究は、オートファゴソーム形成メカニズムの解明のため、高速原子間力顕微鏡(AFM)を用いて構造的理解を深めることを目指した。初めにS字状足場タンパク質Atg17を含むAtg13-Atg17-Atg29-Atg31複合体の液滴の高速AFM観察を行った。ガラス基板上の液滴ではAtg17はランダムに存在していたが、基板をアミノシラン処理した場合、Atg17の配置は規則的であった。これは、ゲル化が進行した構造体の姿を捉えたものと考えられる。また、選択的オートファジーの足場タンパク質であるAtg11、及び哺乳類の機能ホモログFIP200の高速AFM観察により、両タンパク質とも、N末端の線状構造、C末端の球状構造がひも状領域によって連結した独特な二量体構造を形成していることが分かった。哺乳動物への研究の展開として、選択的オートファジー受容体タンパク質p62がポリユビキチン鎖とともに形成する液滴について、液滴構成因子が液滴の性状に与える影響に関する研究も進めた。p62液滴内にULK1キナーゼが濃縮されることをin vitroの系により示し、p62 (268-440aa)とULK1が相互作用する様子を高速AFMによって捉えた。また、Keap1がp62液滴内に濃縮されること、Keap1との結合を増強させるリン酸化ミミック変異体のp62の液滴は、Keap1によって凝集体様構造体へと変化すること等を見出した。
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