研究実績の概要 |
本研究では、メチル水銀を投与したマウス脳内におけるミクログリアの活性化機構について解明を目指した。 まず、我々は、ex vivoでメチル水銀の中枢神経障害を検討可能な、マウス大脳皮質スライス培養系を用い、ミクログリアの活性化を評価可能な系として改良し、報告した (Hoshi et al., 2019, J Toxicol Sci)。その後、本系、およびin vivo、また、初代ミクログリアや培養ミクログリアを用いることで、メチル水銀によるミクログリア活性化機構の検討を行った。その結果メチル水銀はミクログリアにおいて、ミトコンドリアからのROS産生増加を介して、ASK1/p38経路を活性化し、それにより活性化していることを突き止めた。 活性化したミクログリアは、炎症性サイトカインであるTNF-αの発現を増加し、周囲に放出することで神経細胞傷害を惹起する。そこで、マウス大脳皮質スライス培養において、ミクログリア阻害剤である、ミノサイクリンや、リポソーム内包クロドロン酸で、ミクログリア活性化と神経障害の因果関係を確認したところ、メチル水銀による神経細胞死が、それらの阻害剤で抑制された。また、TNF-α受容体のアンタゴニストによっても、本実験系におけるメチル水銀による神経細胞死は抑制された。以上の結果は、論文としてまとめ既に刊行が決定している (Toyamaet al., 2021, Sci Rep, In press)。 以上、本研究により、メチル水銀による中枢神経障害におけるミクログリアの寄与と、その活性化機構について基礎的ではあるが、重要な知見が明らかとなった。
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