組換えタンパク質を用いたプルダウンアッセイの結果、マウスCARはYAPと相互作用し、ヒトCARは相互作用しない結果を得た。段階的にドメインを欠失させたYAPタンパク質を用いた相互作用解析により、YAPのマウスCARとの相互作用領域はWWドメインであることを明らかにした。WWドメインはPYモチーフ(PPxYのアミノ酸配列)と特異的に相互作用することが知られており、マウスCARはそのタンパク質構造の表面側にPYモチーフ(PPAY)をもつが、ヒトCARではこれがPPAHに変異しており、この一アミノ酸の違いがYAPとの相互作用の種差の原因と思われた。そこで、マウスCARのPYモチーフをヒト型に変異させた変異体CARY150Hについて、CARのYAPとの相互作用および肝発がんプロモーション作用に与える影響を調べた。組換えタンパク質を用いたプルダウンアッセイにより、Y150H変異はYAPとマウスCARの相互作用を抑制することを見出した。他方、ヒトCARにマウス型のPYモチーフを導入したH140Y変異体はヒトCARとYAPの相互作用を誘導した。ゲノム編集によりCARY150H変異マウスを作成し、CARY150H変異マウス及び野生型マウスにCAR活性化薬であるフェノバルビタールを投与しその後の肝細胞増殖を調べた。両マウスにおいてCARの標的遺伝子であるCyp2b10遺伝子の誘導が認められたが、野生型マウスでは、CAR活性化に伴う細胞増殖マーカーであるKi-67陽性肝細胞の増加と増殖関連遺伝子の増加が確認されたのに対し、CARY150H変異マウスでは、CAR依存的な増殖マーカーの増加が認められなかった。以上より、CARはPYモチーフを介してYAPと相互作用すること、CAR依存的な肝細胞増殖および肝発がんの種差は、PYモチーフの一アミノ酸の差異による可能性が示された。
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