研究課題
今年度は、以下の成果を得ることができた。1) マウス個体を用いたGM3炎症制御作用の評価/検討GM3をマウス個体に投与することで、実際に個体レベルで炎症状態への影響が現れるかどうかの評価を試みた。実験手法としては、C57BL/6マウスにLPSを投与することで作成した急性・慢性炎症モデルマウスに対して、長鎖GM3または極長鎖GM3を病態生理学的濃度を目標として投与することで、個体内でGM3による炎症制御が生じる状況を人為的に誘導することを試みた。解剖後、マウス血清中へ放出されている炎症性サイトカイン濃度をELISA法によって定量することによって、炎症状態を評価した。LPSの投与量およびGM3の投与量、刺激時間、溶解条件等を検討した結果、マウス血清中の炎症性サイトカイン産生量が極長鎖GM3の投与によって増大する条件を見出した。マウス個体を用いたGM3炎症制御作用の評価系が作成できたと考えられる。今後は、より幅広いGM3分子種や、その前駆体となるスフィンゴ糖脂質の作用の評価にも取り組みたい。また、得られた成果を、再び培養細胞の実験にフィードバックすることで、より詳細な分子メカニズムの解明につなげたい。2) これまでの結果にもとづく研究論文の作成・発表これまでに得られた結果にもとづいて論文を作成し発表することができた。発表した論文では、ヒト血清中に存在するGM3分子種について、メタボリックシンドロームの病態に対応した変動を明らかにした点、ヒト単球やマウスマクロファージにおいて、異なるアシル鎖構造のGM3分子種がTLR4の活性化を正と負に制御する点、その分子認識メカニズムの解析について、主に報告した。
2: おおむね順調に進展している
マウス個体を用いたGM3炎症制御作用の評価系の作成が進んだ。また、これまでの成果をまとめた論文を発表することができた。
マウス個体を用いたGM3炎症制御作用の評価系を用いて、より幅広いGM3分子種や、その前駆体となるスフィンゴ糖脂質の作用の評価にも取り組みたい。また、得られた成果を、再び培養細胞の実験にフィードバックすることで、より詳細な分子メカニズムの解明につなげたい。
新型コロナウイルス蔓延のため、参加予定であった学会の中止・オンライン変更や、予定していた研究活動範囲の縮小・制限が生じた。予算使用計画としては、2020年度に得られた成果にもとづいて、個体・細胞レベルの解析を継続するために計上する予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
The EMBO Journal
巻: 39 ページ: e101732
10.15252/embj.2019101732