研究課題/領域番号 |
19K16359
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
鎌田 祥太郎 昭和薬科大学, 薬学部, 助教 (10823932)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
内在性アミノ酸がPPARαのどこに結合しどのように阻害するかを明らかにするために、X線結晶構造解析を行うためのCorepressor共存下の結晶作成と、このタンパク質に結合して目的結晶の精製を阻害する大腸菌由来脂肪酸を除いたhPPARα-LBDの精製を目標に研究を行った。Corepressor共存下の結晶作成では、3オングストローム程度であった分解能を、より良くするため結晶化条件やクライオ条件の検討を行った。内在性アミノ酸を加えない場合には2.5オングストローム程度まで分解能を向上できたため、内在性アミノ酸を加えた場合の条件検討を行なっている。また、これまで得た3オングストローム結晶では内在性アミノ酸の結合が確認できていない。 大腸菌由来脂肪酸を除いたタンパク質の作成では、エタノールで脱脂・沈殿後にグアニジンに溶解、その後希釈によりグアニジン濃度を下げることで、脱脂したタンパク質が得られ、かつそのタンパク質の活性が確認でき、これを用いてCorepressor共存下の結晶作成を行なっている。また、この脱脂したタンパク質を用いることで、多くのフィブラート系薬や内在性脂肪酸との共結晶を作成することができ、その成果をiScience誌に報告した。またこの精製方法や結晶化法をSTAR protocols誌に報告した。今後は脱脂したタンパク質を用いて高分解能のCorepressor共存下の結晶作成を行なっていく予定であり、解析可能な分解能の結晶は得られていないが、今まで条件検討していたのと同じ条件で結晶が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Corepressor共存下の結晶作成では、微量分注装置モスキートを用いて、1,000種程度の沈澱剤条件を4°Cと20°Cのそれぞれの条件下で試し、その結果いくつかの条件下で結晶が得られた。この条件では分解能は最高で3オングストローム程度であり、以前報告のあるPDB ID: 1KKQと同じ空間群で、Corepressorの結合が確認できた。しかし、PPARαの自由度の高い部分の電子密度が確認できないことや内在性アミノ酸の結合が確認できなかったため、より高い分解能を目指して条件検討を行った。内在性アミノ酸を加えない場合には2.5オングストローム程度まで分解能を向上できたため、それに習い内在性アミノ酸を加えた場合の条件検討を行なっている。 大腸菌由来脂肪酸を除いたタンパク質の作成では、エタノールで脱脂・沈殿後にグアニジンに溶解、その後希釈によりグアニジン濃度を下げることで、大腸菌由来脂肪酸を除いたタンパク質を得た。このタンパク質が活性を持つことを円偏光二色性スペクトルやCoactivator結合能により確認し、適切にリフォールディングしていることがわかった。このタンパク質を用いてフィブラート系薬や内在性脂肪酸との共結晶化を行なったところ、大腸菌由来脂肪酸結合時には得られなかった多くのリガンドとの共結晶を得ることができた。得られたPPARαの構造も脱脂による影響はなかった。現在これを用いてCorepressor共存下の結晶作成を行なっている。現在のところ解析可能な分解能の結晶は得られていないが、今まで条件検討していたのと同じ条件で結晶が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
大腸菌由来脂肪酸を除いたタンパク質の作成ができたため、これを用いてCorepressor共存下の結晶作成を行う。より高い分解能を目指して結晶化条件やクライオ条件の検討を行っている。内在性アミノ酸を加えない場合には、PEGの分子量を変更することで2.5オングストローム程度まで分解能を向上できたため、それに習い内在性アミノ酸を加えた場合の条件検討を行なっている。現在の結晶化条件に近いものだけでなく、様々な条件で結晶化を行い、また結晶の形が異なるような条件も検討する。現在のところ解析可能な分解能の結晶は得られていないが、今まで条件検討していたのと同じ条件で結晶が得られている。また、内在性アミノ酸を加えないCorepressor結合結晶の分解能の良いものが得られていることから、その結晶を目的リガンド溶液に浸して結合させるSoaking法も行い、結合が確認できるか構造解析を行う。この場合には内在性アミノ酸の濃度や浸す時間の検討を行う。 コロナウイルスの影響で去年前期はつくばフォトンファクトリーでの測定に制限があったが、リモートでの測定環境を整えたため、結晶ができればすぐに測定可能となっている。構造が得られれば、その結合部位のうち結合に重要なアミノ酸残基の点変異体を作成し、アンタゴニスト活性に変化があるか調べ、得られた構造が正しいか確認を行う。また構造をPDBに登録し、これまで得た結果と合わせて論文執筆を行う。
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