内在性アミノ酸がPPARαのどこに結合しどのように阻害するかを明らかにするために、X線結晶構造解析を行うためのCorepressor共存下の結晶作成を目標に研究を行った。様々な結晶化条件を試し、結晶の作成には成功したが、内在性アミノ酸の結合場所は分かっていない。この理由は、分解能が悪く内在性アミノ酸の電子密度か判断し難いことと、アゴニスト非結合型のためタンパク質の自由度が高く、電子密度が定まらない領域が存在することにある。現在はこの問題を解決できる結晶の作成を目指している。その中で、PPARαに結合して目的結晶の精製を阻害する可能性のある大腸菌由来脂肪酸を除いたhPPARα-LBDの精製に成功した。このタンパク質でも結晶化条件を検討したが、構造解析可能な分解能の結晶を得られていない。一方、この脱脂したタンパク質を用いることで、これまで報告のなかった多くのフィブラート系薬や内在性脂肪酸との共結晶を作成することができ、その成果をiScience誌に報告した。またこの精製方法や結晶化法をSTAR protocols誌に報告した。PPARには他に二つのサブタイプがあり、アミノ酸の相同性は60-70%程度のため、内在性アミノ酸により他のPPARサブタイプの活性が変化するか測定した。その結果、PPARδでは阻害が見られなかったが、PPARγでは阻害が見られた。PPARγについても結晶化方法を確立し、SaroglitazarのPPARγとの複合体構造を作成し、Biol Pharm Bull誌に報告した。また、内在性アミノ酸との結晶化は検討中であるが、Corepressor共存下の結晶作成にも成功し、PPARαと共に世界で初めてApo型PPAR構造解析に成功している。今後も内在性アミノ酸の阻害様式を明らかにするため様々な検討を行う。
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