研究実績の概要 |
本研究では、メタボローム解析を通じて、培養細胞のマイコプラズマ汚染の検出またはマイコプラズマ汚染に関わる機構の解明を目指す。具体的には、細胞培養の培地成分または培地上方気相成分(臭気成分)を、LC-MSまたはGC-MSで解析することで、マイコプラズマ感染に特徴的な代謝産物を特定し、関連する酵素または遺伝子の解析を行うことで、マイコプラズマに汚染されることによる細胞の状態変化を解明する。この状態変化を捉えることで、マイコプラズマ汚染の検出に利用する。 研究1年目には、抗体産生に利用されるCHO DG44細胞にMycoplasma hyorhinisを接種したマイコプラズマ感染細胞を確立し、生存率及び細胞増殖性に影響がないものの、マイコプラズマが増殖することを確認した。 研究2年目には、細胞及び培養上清のLC-MS/MS解析によるメタボローム解析によって、マススペクトルデータの多変量線形回帰分析でCHO DG44細胞のマイコプラズマ感染状態が判別されることが示唆された。 研究3年目には、GC/MS解析でメタボローム解析を行うためのサンプル調製を実施すると共に、日本薬局方及び欧州薬局方で求められる核酸増幅法(NAT)での検出感度10 CFU/mLよりも低濃度のマイコプラズマに感染させた際のマイコプラズマの増殖に関して検証した。GC/MS解析用のサンプル調製では、アミノ酸及び糖類を検出するため、固相誘導体化法によって濃縮及び揮発性物質化を実施した。また、低濃度マイコプラズマの感染では、CHO DG44細胞に5 CFU/mLのM. hyorhinisを接種すると、三日後には100~1,000 CFU/mLまで増殖することを確認した。細胞培養では、NATの検出感度未満の低濃度のマイコプラズマであっても、汚染によるリスクが否定できないことが示唆された。
|