研究課題/領域番号 |
19K16376
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
根本 亙 東北医科薬科大学, 薬学部, 助教 (80635136)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ACE2 / ジミナゼン / 炎症性疼痛 / 神経障害性疼痛 / 脊髄 |
研究実績の概要 |
2019年度は炎症性および神経障害性疼痛に対するACE2活性化薬ジミナゼン (DIZE) の効果を検討した。炎症性疼痛に対する効果の検討にはホルマリン試験を用いた。すなわち、2%ホルマリン液をマウス足蹠内へ投与し、その後に誘発される2相性の侵害刺激行動 (投与部位へのlickingおよびbiting行動) を、投与直後から30分間測定した。その結果、DIZE (10-300 pmol) をホルマリン投与1時間前に脊髄クモ膜下腔内 (i.t.) へ投与することにより、第2相目の反応のみが用量依存的に抑制されることが明らかとなった。さらに、この抗侵害刺激作用はMas受容体拮抗薬A779 (3 nmol) により完全に拮抗された。マウスの脊髄後角におけるACE2の発現を免疫染色法により解析したところ、ACE2はNeuN陽性細胞 (神経細胞) およびIba-1陽性細胞 (ミクログリア) に発現しており、GFAP陽性細胞 (アストロサイト) には存在しないことが明らかとなった。また、DIZE (100 pmol, i.t.) 投与後の脊髄背側部ではACE2活性が有意に上昇していたことから、DIZEは脊髄後角の神経細胞やミクログリアにおけるACE2/Ang (1-7)/Mas受容体系を活性化させることで抗侵害刺激作用を示すことが示唆された。次いで、慢性絞扼神経損傷 (CCI) モデルマウスを用いて、神経障害性疼痛に対するDIZEの効果を検討した。その結果、DIZE (100 pmol, i.t.) はCCIにより誘発される熱性および接触性痛覚過敏を顕著に抑制することを見出した。また、DIZE (15 mg/kg) を腹腔内 (i.p.) へ連続投与することによりCCIマウスにおいて認められる痛覚過敏が投与3週間目から有意に低下することが明らかになった。これらの詳細なメカニズムに関しては2020年度以降の研究で検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り炎症性および神経障害性疼痛に対するジミナゼンの効果を明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
現在、ACE2阻害薬を合成中であり、完成次第ジミナゼン (DIZE) が抗痛覚過敏を示す際の詳細な作用機序解明を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末近くに発注した抗体の納期が輸入等の影響により遅れた為、物品費が予定した金額まで発生しなかった。次年度は、今回の繰越金を試薬等の物品購入費に充て使用することを予定している。
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