研究実績の概要 |
研究代表者は留学に伴う研究中断のため2021年度に当該研究は実施していない.しがしながら,2019年度までの研究において,慢性絞扼性神経損傷 (CCI) マウスで認められる神経障害性疼痛がACE2活性化薬ジミナゼン (DIZE) の脊髄クモ膜下腔内 (i.t.) 投与により抑制されることを見出しており,2020年度にはその作用機序の明らかにしている.すなわち,CCIマウスは手術後7日目において顕著な熱性および接触性痛覚過敏を示したが,これらの痛覚過敏作用はDIZE (1-100 pmol, i.t.) により用量依存的に抑制された。これらの抗痛覚過敏作用はMAS1受容体拮抗薬A779 (3 nmol, i.t.) により完全に消失した.このことから,CCIマウスに対するDIZEの抗痛覚過敏作用にはMAS1受容体が関与する可能性が示唆された.MAS1受容体はアンジオテンシン (Ang) (1-7) の受容体であることから,DIZEはACE2の活性化を介してAng (1-7) の産生を促すことで抗痛覚過敏作用を示したものと考えられる.DIZE (100 pmol, i.t.) 投与後の脊髄後根神経節 (DRG) および脊髄におけるACE2活性を測定したところ,DIZEはDRGに影響を与えることなく脊髄背側部のACE2活性のみを有意に増大させることが明らかとなった。これらの結果から、ACE2はCCIマウスで認められる神経障害性疼痛の発現には関与しないものの、DIZEによるACE2の活性化は痛覚過敏を抑制する上で有用な標的となり得ることが示された。
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