研究実績の概要 |
KCNQ (Kv7) K+チャネル(活性化閾値が低く不活性化しないM電流に関わるK+チャネル)開口薬の全身投与が慢性疼痛モデル動物に対して鎮痛効果を示すことは先行研究により報告されてきたが、脊髄後角におけるKCNQ (Kv7) K+チャネル開口薬の鎮痛メカニズムは未解明である。2019年度は、KCNQチャネル開口薬retigabineの全身投与による鎮痛効果を我々自身による行動実験により確認すると共に、脊髄髄腔内投与による脊髄レベルでの鎮痛効果を明らかにし、また、脊髄スライス標本を用いた電気生理学的実験も開始した。坐骨神経部分結紮により作製した神経障害性疼痛モデルマウス (Seltzerモデル) に対して、retigabineを腹腔内投与(10, 30 mg/kg)あるいは脊髄髄腔内投与(10, 30 microg)すると、用量依存的に機械的アロディニアおよび熱痛覚過敏に対して緩解作用を示した。中でも、30 mg/kg腹腔内投与はSeltzerモデル作製前のレベルまで疼痛閾値を改善した。さらにretigabine 30 mg/kgの腹腔内投与15分前に、KCNQチャネル閉口薬XE-991を腹腔内投与(5, 10 mg/kg)あるいは脊髄髄腔内投与(5, 10 microg)すると、用量依存的に鎮痛効果を抑制した。これは、脊髄レベルにおけるKCNQチャネルの開口が鎮痛効果に寄与することを明確に示している。次に、Seltzerモデルマウスより作製した後根付き脊髄スライス標本を用いた電気生理学的実験では、潅流適用したretigabineが、A線維刺激誘発性興奮性シナプス後電流 (A-fiber-mediated EPSCs) および自発性興奮性シナプス後電流 (sEPSCs) に対して抑制作用を示す結果が得られつつある。
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