研究課題/領域番号 |
19K16382
|
研究機関 | 一般財団法人脳神経疾患研究所 |
研究代表者 |
齋藤 僚 一般財団法人脳神経疾患研究所, 先端医療研究センター, 研究員 (30732846)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 小胞体ストレス / オートファジー / 神経薬理学 / 疾患特異的iPS細胞 / ライソゾーム病 / 神経分化 |
研究実績の概要 |
本研究では、疾患特異的iPS細胞に対する分子生物学的解析によって、希少難治性疾患における病態形成と小胞体ストレスとの関連を解明することを目的としている。2019年度においては、Niemann-Pick病C型(NPC)を対象として、NPC患者由来iPS細胞の培養および神経系細胞への分化誘導を実施した。各iPS細胞株におけるNPC1遺伝子の変異解析はゲノムDNAシーケンスによって行い、NPC患者由来iPS細胞株のExon内にはc.2000C>T、c.3482G>A、c.581_592delInsGおよびc.3263A>Gなどの変異が確認された。これらNPC患者由来iPS細胞株における脂質の蓄積はLipi-Dye試薬を用いた脂肪滴染色により評価を行い、同細胞は未分化状態においても高度に脂肪滴を内包することが示された。続いて、NPC由来iPS細胞株を神経系細胞へと分化させ、これらの細胞における表現型の解析を行なった。PSC Neural Induction Mediumを用いて分化させた各iPS細胞は、Nestin、Sox1およびPax6などの遺伝子発現を認め、同分化細胞は神経幹細胞に分化したことが示された。また、NPC患者に由来する神経幹細胞では、AlbuMAX I, Lipid-Rich BSAの添加に伴い、細胞内に遊離コレステロールや脂肪滴、LAMP1陽性のライソゾームが蓄積することが示された。続いて、これらの神経幹細胞を神経細胞へと分化させ、免疫細胞染色法により神経分化能の評価を行った。各種神経幹細胞に由来する神経細胞は、いずれもTuj1の発現を示し、神経突起の伸長も認められた。一方、各細胞間におけるLAMP1陽性ライソゾームの蛍光強度に有意な差は認められず、神経変性・脱落などの神経病理を再現するには、より長期的な培養期間を要することが推察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所属機関の変更に伴い研究の遅延が懸念されたが、当初予定していた神経幹細胞への分化誘導や遺伝子発現解析はおおむね遂行できたと考えている。また、培養方法を改良することにより、同疾患における表現型の一端も確認できた。モルフォゲンによる終脳への分化誘導には着手できていないが、効率的な神経分化法の確立も見込めたため、進捗状況の区分を「(2)おおむね順調に進展している」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度における研究実績により、未分化iPS細胞、神経幹細胞および神経細胞を対象とした実験・解析が可能となった。2020年度においては、引き続き疾患特異的iPS細胞を用いた病態モデルの確立を進めるとともに、本分化誘導技術を用いて同疾患の病態形成に対する小胞体ストレスの寄与について解析を進める予定である。また、神経分化によって得られた神経細胞に対して透過型電子顕微鏡(TEM)解析を実施し、小胞体、ミトコンドリアおよびライソゾームなど、細胞内小器官の形態変化について検証を実施する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和2年3月に開催予定であった本国での学会が、主催者である学会の判断(新型コロナウイルス感染症に対する感染拡大防止措置)によって中止(誌上開催)されることとなった。会議場での開催中止に伴い旅費として計上予定であった予算に余剰が出たため、次年度使用額が生じた。
|