2型糖尿病に合併する脂質異常症発症機序としてトリグリセリド再合成酵素およびイオン輸送体発現が関与する2つの経路を考えて研究を実施している。前年度まではトリグリセリド再合成経路に焦点を当てて研究を実施してきた。本年度はイオン輸送体に焦点を当てて研究を実施した。 2型糖尿病では組織間質液の酸性化が起こっており、この酸性化がインスリン抵抗性を引き起こす要因の一つと考えている。そのため組織間質液のpH調節を担っているイオン輸送体が重要と考えている。このイオン輸送体はカルボキシル基を含んだ有機酸を基質とする。2型糖尿病モデル(OLETF)ラットと対照(LETO)ラットに短鎖脂肪酸含有物質である梅エキスの含有食(梅食)および黒酢の含有食(黒酢食)を1ヶ月間行い、血中脂質濃度改善効果と小腸形態・機能的変化やイオン輸送体(SMCT1)発現との連関を明らかにすることを目的とした。
梅食および黒酢食ともに、血中脂質濃度改善効果が得られなかった。梅食についてはイオン輸送体発現との連関も見られなかった。黒酢食については解析中である。この原因の一つとして、今回使用したOLETFは13週齢という2型糖尿病発症の早期段階で使用した点と、食事療法期間が1ヶ月間と短かったことが考えられる。今後は高週齢の2型糖尿病モデルラットを使用することも検討し、さらに食事療法期間の延長も考慮する必要があると考えている。
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