研究課題/領域番号 |
19K16389
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研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
福森 良 長崎国際大学, 薬学部, 助教 (60713774)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | THC / 大麻 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、大麻の主要活性成分であるΔ9-THC(THC)を親マウスに反復投与して、この親マウスより産まれた、THCを直接摂取していない仔マウス(第二世代マウス)における影響を検討することである。初年度は研究計画のうち、第二世代マウスの作成と形態学的な解析を中心に行った。 生理食塩水またはTHC(3.2mg/kg)を30日間、野生型の雄性マウスおよび雌性マウスに反復皮下投与した。その後10日間の退薬期間を設けた後に、生理食塩水を投与した雌雄同士、THCを投与した雌雄同士をそれぞれ交配した。THCを投与した親マウスでは対照群とくらべて、交配の有無や交配までの期間、そして妊娠期間に影響は見られなかった。 この、生理食塩水またはTHCを投与した親マウスから産まれた第二世代の仔マウスを8週齢まで飼育し、成長に伴う形態変化を観察した。まず、出産した仔の数については、生理食塩水群またはTHC群に影響は見られなかった。また、成長に伴う第二世代マウスの体重、体長の変化についても、生理食塩水群またはTHC群の間で影響は見られなかった。その他にも、奇形や外見的な変化は認められなかった。 この生理食塩水またはTHCを投与した親から産まれた、第二世代マウスについて、8週齢に飼育した後に行動生物学的な解析を行っている。これまでの解析では、Open field試験において、THC群ではマウスの自発運動量が低下する可能性が示唆されている。今後も継続して行動生物学的な解析を続ける予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究では、予定していた実験計画がおおむね順調に進行することができた。初年度では、THC反復投与後のマウスより産まれた第二世代マウスの作成に成功し、その産まれてきたマウスの形態学的解析を行うことができた。結果としては先に記述したように、生理食塩水群とTHC群で第二世代マウスにおける形態学的な影響は認められなかったが、現在は行動生物学的な手法を用いて、第二世代マウスの高次機能について解析を行っているところである。また、第二世代マウスの分子生物学的解析も進めているところであり、特にLC/MSを用いた、脳内内因性カンナビノイド(アナンダミド、2-AG)やグルタミン酸量の測定について、現在測定方法の確立を目指して進行している。 しかしながら、昨今のコロナ禍において、通常業務の負担および、リモートワークが増加していることもあり、次年度の研究の進行については不透明である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度では、THC反復投与後のマウスより産まれた第二世代マウスの作成に成功し、形態学的解析を行うことができた。また、一部行動生物学的な手法を用いて、マウス高次機能に対する影響も検討している最中である。今後の計画としては、当初の計画通りに、①“自発運動量”を測定するOpen field試験、②“感覚情報処理機能”を測定するPrepulse inhibition試験、③ “社会性行動”を評価するSocial interaction試験、④“協調運動”を評価するRotarod試験、⑤“認知機能”を評価するNovel object recognition試験などの行動生物学的解析により、親マウスにおけるTHC反復投与の第二世代マウス高次機能への影響を検討していく予定である。 また、第二世代マウスの分子生物学的解析も継続して進めていく予定である。特にLC/MSを用いた、脳内内因性カンナビノイド(アナンダミド、2-AG)やグルタミン酸量の測定については、今年度中の測定方法の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
残金は、コロナ禍により物品の納品が遅れたための残金である。 本研究での、経費の主要な用途は、研究を進めるにあたって必要不可欠であると考えられる、実験動物や動物投与用の試薬、分子生物学実験に必要な試薬などを中心とする消耗品 である。次年度は行動生物学的解析にくわえて分子生物学的な手法を用いて実験を進める予定であり、実験動物や動物投与用の試薬、分子生物学実験に必要な試薬などを中心とした消耗品の購入に経費を使用する予定である。
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