研究課題/領域番号 |
19K16389
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研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
福森 良 長崎国際大学, 薬学部, 助教 (60713774)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | THC / 大麻 / 内因性カンナビノイド |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、大麻の主要活性成分であるΔ9-THC(THC)を親マウスに反復投与して、この親マウスより産まれた、THCを直接摂取していない仔マウス(第二世代マウス)における影響を検討することである。 2年目である本年では、昨年に引き続いて第二世代マウスにおける特にマウス高次機能の変化について、行動生物学的に解析を行った。また、これと並行して、本研究では第二世代マウスの脳組織における内因性カンナビノイド関連因子の発現変動を分子生物学的な手法で検討をすることを目的としている。そこで、本年は特にLC/MSを用いた、脳内内因性カンナビノイド(アナンダミド、2-AG)の測定について、まずは測定方法の確立を目指して検討を行った。 本年ではOpen field試験に加えて、“感覚情報処理機能”を測定するPrepulse inhibition試験、“認知機能”を評価するNovel object recognition試験を行い特にマウス高次機能の変化について検討した。その結果、Open field試験では、コントロール群と比較して、THC群の第2世代マウスで自発運動量が有意に低下し、また中心部の滞在時間も低下していた。また、Prepulse inhibition試験では、THC群の第2世代マウスでプレパルスインヒビションの低下が見られた。一方で、Novel object recognition試験ではコントロール群とTHC群で影響は見られなかった。 また、第2世代マウスにおける脳内内因性カンナビノイドの定量化を目的として、まずは LC/MSを用いた測定方法の確立を目的とした。過去の報告をもとに、当研究機関に設置されているLC/TOF-MSを用いて検討した。その結果、アナンダミド、2-AGともに単一のピークが得られ、測定範囲内における直線的な検量線が得られたことから、測定方法が確立出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、コロナ禍の影響があり、研究活動にもかなりの支障があった。リモートワークの推進により研究機関への通勤が制限され、またコロナ禍における日常業務の負担の増加があった。しかしながらその中においては、目標とした研究課題をしっかりと進捗できたと感じている。 目標とした研究課題のうち、行動生物学的解析についてはかなりの部分がこれまでに終了できた。 また分子生物学的解析については、LC/MS法を用いた解析方法が確立できたことから、次年度では実際にTHCを投与した親マウスより産まれた、仔マウス(第二世代マウス)において脳内内因性カンナビノイドの変化を検討することが出来る。 そして、これまでに得られた研究結果の情報をもとに、CB1 受容体ノックアウトマウスを用いて、野生型との比較試験を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、まずLC/MS法による脳内内因性カンナビノイドの測定方法が確立できたことから、この測定方法を用いて生理食塩水またはTHCを投与した親マウスより産まれた、仔マウス(第二世代マウス)における脳内内因性カンナビノイドの変化を検討する予定である。これにより、行動生物学的な解析により得られた第二世代マウスの行動異常発生のメカニズムを検討する。 また、当研究室ではCB1受容体ノックアウトマウスを飼育している。これまでに野生型マウスで得られた行動生物学的な実験より得られたマウスの行動異常が、CB1受容体を介した影響によるものなのかを検討する目的で、CB1受容体ノックアウトマウスを使用して実験を行う予定である。具体的には野生型マウスと同様に、生理食塩水またはTHCを投与して、産まれた仔マウス(第二世代マウス)で実験を行う。実験内容としては、野生型マウスで行ったOpen field試験、Prepulse inhibition試験、Novel object recognition試験など種々の行動生物学的な解析、およびLC/MS法による脳内内因性カンナビノイドの測定により分子生物学的なメカニズムも検討するよていである。
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