本研究の目的は、大麻の主要活性成分であるΔ9-THC(THC)を親マウスに反復投与して、この親マウスより産まれた、THCを直接摂取していない仔マウス(第二世代マウス)における影響を検討することである。 3年目である本年では、昨年に引き続いて第二世代マウスにおける特にマウス高次機能の変化について、行動生物学的に解析を行った。また、これと並行して、本研究では第二世代マウスの脳組織における内因性カンナビノイド関連因子の発現変動を分子生物学的な手法で検討をすることを目的としている。そこで、本年は特にLC/MS法を用いた、脳内内因性カンナビノイド(アナンダミド、2-AG)の測定について検討を行った。 以前の検討により、THC群の第2世代マウスでは、コントロール群と比較して自発運動量が低下する可能性が示唆されている。そこで本年度では、rota-rod試験を用いてマウスの”運動機能”について評価し、自発運動量の低下が運動機能に対する影響かを検討した。その結果、マウスの運動機能についてはコントロール群とTHC群で影響は見られなかった。また、昨年度に引き続きPrepulse inhibition試験において“感覚情報処理機能”を評価も行った。その結果、昨年度における結果と同様にTHC群の第2世代マウスでプレパルスインヒビションの低下が見られた。 また、昨年度の研究により測定方法が確立出来たLC/TOF-MSを用いた脳内内因性カンナビノイドの定量化方法を用いて、第2世代マウスにおける脳内内因性カンナビノイドの変化を検討した。その結果、THC群の第2世代マウスでは、6週齢において2-AGが減少する傾向がみられているが、これについては今後さらなる検討が必要である。
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