特殊な環境下にあるマレーシアの酸性雲霧林ブリンチャン及びモンゴルのアルカリ性を示すキャラガス湖とシャズガイ湖に生育する微生物には,温和な環境下で生育する微生物とは一線を画す多種多様な未知の天然生物活性物質が未だ眠っていることが大いに期待される。昨年度に同定した4種の菌体のうち,S. koyangensisの化学成分に関しては,これまでに2報の論文が公表されているのみである。また,S. koyangensisのメタノール抽出液は,抗菌活性及びメラニン産生抑制活性を有していることが昨年度において確認された。そこで,本年度は,YMG培地中にて培養したS. koyangensisが生産する化合物の同定を試みた。まず,培養した菌体からメタノールにて化合物を抽出し,次いで,水と酢酸エチルで分配を行うことで酢酸エチル抽出物を得た。この酢酸エチル抽出物について,シリカゲルクロマトグラフィーを用いて23画分に分画し,各々をLC-MSにて分析した結果,この23画分中には,これまでにS. koyangensisから単離された化合物とは異なる分子量の化合物が含まれていることが明らかになった。そこで,さらに,各種カラムクロマトグラフィーを繰り返し,未知の分子量を示す化合物の精製を試みた。しかし,いずれの操作においてもこれらの化合物を高純度に精製することはできなかった。現在,化学修飾を施して誘導体化したこれらの化合物について精製を進めているところである。
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