研究課題/領域番号 |
19K16394
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山野 喜 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (70650597)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 難培養性微生物 / 天然物化学 / 生物活性物質 / Actinoplanes |
研究実績の概要 |
初年度はgichipを用いて新規性の高い真菌類の分離培養およびそれらが産生する生物活性物質の探索を行い一定の成果が得られたが、細菌類と比べて真菌類の全ゲノム配列解析が困難であることが今後の研究展開の支障になると予想されたため、gichipを用いた分離培養の対象微生物を真菌類から細菌類に変更した。土壌から得られる細菌類を対象に通常の分離培養法(平板画線法)およびgichipを用いておよそ60種ずつ分離培養し16SrRNA配列をもとに菌種を比較したところ、通常の分離培養法ではPseudomonas属を主とするProteobacteria門Gammaproteobacteria鋼の細菌が分離株全体の80%以上を占めていたのに対し、gichipを用いるとActinobacteria門Actinobacteria鋼がおよそ40%, Firmicutes門bacilli綱がおよそ50%得られ、同じ土壌から明確に異なる菌種を分離できることが確認された。続いて、分離株の中から新規性が高いと推定されたActinoplanes属細菌の全ゲノム解析を行い、得られた配列をGTDB等を使用しゲノム配列既知の細菌との比較を行ったところ、最も配列が近い細菌とのAverage nucleotide identity (ANI)値は87.6%となり、種の境界を定義するANIカットオフ95-96%を下回っていたことから、Actinoplanes属の新種または既知の種で、まだゲノムが報告されていない種であることが確認された。また本株のゲノム配列から24個の生合成遺伝子クラスターがantiSMASHを用いて検出されたことから、本株が生物活性物質の探索源として有望であることが示唆された。現在本株の培養抽出物から生物活性物質の探索を行っており、また、gichipを用いた新規性の高い微生物種の分離作業も継続している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外での研修期間と新型コロナウイルスのパンデミックの時期が重なり、研究にかけられる時間が大幅に制限されたため。
|
今後の研究の推進方策 |
パンデミックの影響で本年度は研究が遅れ、研究費もほとんど使用することがなかったことから、研究期間の1年の延長を行う予定である。 研究の進展状況としては当初の研究計画通り新規性の高い微生物の分離培養が行えており、継続してそれらの分離培養および生物活性物質の探索を行っていく予定である。さらに全ゲノム配列解析等の研究手段も用いることが可能となったことから、今後は新種微生物の分離培養およびそのゲノム情報のデータベースへの登録やゲノム情報を基にした生物活性物質の探索に着手していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:パンデミックと海外研修の期間が重なり研究に割ける時間が制限されていたため本年度はほとんど研究費を使用しなかった。 使用計画:研究期間を1年延長し、本年度の繰越金に相当する金額を翌年度に、翌年度分として請求した助成金を延長した最終年度に使用する予定。
|