研究課題/領域番号 |
19K16395
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
石田 智滉 高知大学, 医学部附属病院, 薬剤師 (90792010)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 漢方薬 / SAMP8 / KKAy / 十全大補湯 / 柴胡桂枝乾姜湯 / 筋萎縮 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
前年度に実施したin vitro試験を用いた1次スクリーニングの結果から、柴胡含有処方において、一酸化窒素(NO)産生抑制活性、最終糖化産物(AGEs)産生抑制活性、Sirtuin1(Sirt1)転写活性、スーパーオキシド・ジスムターゼ(SOD)様活性が高いことが分かった。 本年度は柴胡含有処方を含む複数の漢方処方について糖尿病性筋萎縮モデルマウス(KKAy)に対する筋萎縮抑制効果を評価した。その結果、柴胡桂枝乾姜湯、十全大補湯において筋萎縮抑制効果が見られた。これらの処方にはモデルマウスにおいて骨格筋のSirt1の発現量を増加させ、炎症性サイトカインの発現を低下させる作用が見られ、これらの作用を介して筋萎縮を抑制させたと考察している。 さらに、柴胡桂枝乾姜湯及び十全大補湯を構成する生薬のうち、桂皮、黄耆、甘草、黄ゴンの熱水抽出エキスにおいてマウス骨格筋由来C2c12細胞におけるSirt1転写促進作用が見られ、当該生薬に薬理活性成分が含まれることが考察された。薬理活性成分の検討については本年度に継続して研究を進めていく。 また、十全大補湯においては老化促進マウス(SAMP8)に対しても筋萎縮抑制効果を示した(Biol Pharm Bull 2021 44(1) 32-38)。これらの成果については、学術論文として発表予定であり、そのうち一報は既に受理され、残りの成果については現在投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は漢方薬を用いた糖尿病性サルコペニア予防治療の確立を目的として研究を進め、令和元年度にin vitro試験の薬理活性を指標とした1次スクリーニングを行い、令和2年度に糖尿病性筋萎縮モデルマウスに投与して2次スクリーニングを行い、令和3年度に選抜された漢方処方の前臨床試験を行い、臨床試験に向けたエビデンスを構築する計画となっている。 そのため、昨年度は1次スクリーニングの結果からin vitro試験において高い活性を示した処方について、糖尿病性筋萎縮モデルマウス(KKAy)を用いて筋萎縮抑制効果の評価を行った。その結果、柴胡桂枝乾姜湯、十全大補湯において筋萎縮抑制効果が見られた。今年度はその結果を踏まえて、柴胡桂枝乾姜湯及び十全大補湯に含まれる活性成分の探索及びその作用機序の検討を行い、臨床試験に向けたエビデンスを構築する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は当初の実験計画に従い、二次スクリーニングとして、糖尿病モデルマウスを用いて筋萎縮抑制効果を評価した。最終年度にその結果を踏まえて、二次スクリーニングで筋萎縮抑制効果が確認された柴胡桂枝乾姜湯及び十全大補湯に含まれる活性成分の探索及びその作用機序の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による研究自粛により、計画していたモデル動物を用いた2次スクリーニングについて、予定していた10処方程度のスクリーニングではなく、in vitro試験において特に活性の高かった数処方の効果を確認することにしたため、動物、試薬等の購入費が軽減された。また、学会発表についてもオンライン開催となったため、旅費が不要となった。これらの理由により余剰金が発生した。 しかし、これまでに当初計画していたよりも多くの研究成果が得られており、これらについてまとめた学術論文を投稿したいと考えている。そのため、余剰金については、英文校正費用等の論文投稿にかかる費用として今年度予算に計上したい。
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