研究課題
糖尿病性サルコペニア治療薬となり得る漢方処方を選抜するために、in vitro試験を用いてSirtuin1(Sirt1)転写活性を指標とした1次スクリーニングを実施した。Sirt1は、インスリン感受性、炎症、酸化ストレスを改善することが知られており、糖尿病性サルコペニアの治療標的になり得ると考えている。スクリーニングの結果、柴胡桂枝乾姜湯において最も高いSirt1転写活性がみられた。そこで、糖尿病肥満モデルマウスであるKKAyマウスに対して、柴胡桂枝乾姜湯を予防的に投与し、筋萎縮抑制効果について検討した。その結果、柴胡桂枝乾姜湯投与により骨格筋の萎縮が抑制され、Sirt1のmRNAの発現が増加した。また、我々は過去に1型糖尿病モデルマウスに対する十全大補湯の筋萎縮抑制効果を報告している。こちらも同様にKKAyマウスに投与したところ、筋萎縮抑制効果とSirt1のmRNA発現量上昇が確認された。さらに、十全大補湯においては老化促進マウス(SAMP8)に対しても筋萎縮抑制効果を示した。また、柴胡桂枝乾姜湯及び十全大補湯における活性成分の同定を目指して、それぞれの処方を構成する生薬のエキスについてSirt1転写活性を指標として評価した結果、桂皮、甘草、黄ごん、黄耆においてSirt1の転写を促進する作用があることが分かった。以上のことから、Sirt1の発現量を指標としたスクリーニングにより、柴胡桂枝乾姜湯及び十全大補湯に糖尿病性サルコペニアに対する予防効果があることが示唆された。今後、さらに研究を進め、サルコペニア治療のための漢方薬のエビデンスの蓄積が求められる。
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