心臓は、様々なストレスが持続的に加わることで、最終的に心機能の低下した心不全へと至る。心不全の進行には心筋細胞の肥大が関与することから、この心筋細胞肥大を抑制することが心不全の予防や治療につながると期待されている。我々は、心筋細胞肥大を指標に天然抽出物ライブラリーからスクリーニングを行い、柑橘類果皮成分であるノビレチンが心筋細胞肥大を抑制し、心不全の進行を抑制することを見出した。本研究はノビレチンの心筋細胞肥大、心不全進行抑制作用のメカニズム解析を目的とした。 ノビレチンの作用メカニズムを解析するため、ストレプトアビジンプローブを付与したノビレチンを用いて心臓抽出物からノビレチン結合タンパク質を精製、162個のノビレチン標的因子を同定した。その中の1つであるノビレチン結合タンパク質1(NBP1)は主に心臓、脳、筋肉に発現、細胞内シグナル経路の調節に関与しているが、心臓での作用は明らかではない。蛍光免疫染色によるNBP1の局在について検討したところ、心筋細胞では核とその周辺に分布していた。In vitroでの検討により、ノビレチンはNBP1と直接結合していること、NBP1の酵素活性を増加することが判明した。また、NBP1過剰発現マウスでは、圧負荷による心肥大及び心不全の進行を抑制した。逆にNBP1ノックアウトマウスではノビレチンの心肥大・心不全進行抑制作用がみられなかった。 以上の結果より、ノビレチンが有する心筋細胞肥大・心不全進行の抑制作用にNBP1が関与することが示唆された。今後、ノビレチン/NBP1経路を詳細に解析する予定である。
|