研究実績の概要 |
睡眠障害は抑うつ・不安症状を引き起こす要因となり、患者のQOLを著しく低下させる。抗うつ薬や抗不安薬の副作用の観点から、本研究では睡眠障害に伴う不安症状の軽減に対する芳香療法の有効性を検討した。 睡眠障害モデルマウスは水浸ストレスを24時間負荷することで作成し、高架式十字迷路試験における不安行動の増大を既に確認している。今回まず、睡眠障害モデルマウスに対してセサミオイルを30~90分間吸入投与し、投与時間の違いによる抗不安作用の発現と、ストレスに関連する脳内遺伝子の発現を解析した。その結果、高架式十字迷路試験におけるオープンアームへの進入率および滞在時間が吸入時間60分において最も増加し、うつ病のマーカーであるDUSP1タンパク質の遺伝子発現量が、吸入時間60分以降で低下する結果が得られた。 次にセサミオイルの抗不安作用に寄与する成分の同定を行った。セサミオイルの主要成分としてこれまでに、2,5-dimethylpyrazine、2-methoxy phenol、furfuryl mercaptanを同定している。単一成分の吸入投与において、2,5-dimethylpyrazineおよび2-methoxy phenol群で高架式十字迷路試験における抗不安作用が観察されたが、furfuryl mercaptan群ではその作用は弱かった。海馬および線条体におけるDUSP1の発現量は、2,5-dimethylpyrazineおよび2-methoxy phenol群で有意に減少していた。 以上の研究から、セサミオイルの最適濃度と有効成分を明らかにした。特に、2,5-dimethylpyrazineと2-methoxy phenolはDUSP1の発現を有意に抑制したことから、これらの分子を有効な抗ストレス剤として利用できる可能性がある。
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